[029] イオンが食品加工ロボ(日経新聞)

先日“生産性”の計算方法について、ご紹介しました。
“生産性”の計算方法!


この計算式があたまに入っていると、「生産性」という言葉に出会ったときに、オフィシャルな意味での“生産性”のことを言っているのか、「生産効率」や「業務効率」などの、いわゆる「生産性」のことを言っているのかが、よくわかるようになります。

今日ご紹介するのは「イオンはロボットを導入し、生鮮食品加工の大幅な省力化を図る。」という記事です。「将来的な人手不足をにらみ、人手のかかる精肉加工分野でスライスから盛りつけ、包装まで一貫して自動化できるロボットを開発、全国の加工センターに順次導入する。」としています。

これを“生産性”の計算式で考えてみましょう。

イオンは人員整理をするといっているわけではないので、「従業員数」は少なくとも減ることはない。つまり分母はそのままということですよね。

採用難とはいえ、すこしはパートなどの従業員を雇い入れるかもしれませんが、イオンほどの大企業であれば、もともとの従業員の数が「ハンパなく」おおきく、すこしぐらい雇い入れたとしても、まあまあ分母はそのままでしょうね。

一方、分子の従業員人件費は、少し上昇する傾向にあると思います。
昨年(平成28年)の統計によると賃金上昇率は、イオンのような大企業で0.6%です。上昇するかもしれませんが、賃金上昇そのもので、生産性を押し上げるパワーはないでしょうね。

イオンのお肉は、わたしもパック入りを買いに行きますが、日曜日の遅い時間になると、売り切れまぢかで、残り少なくなっていることがあります。

これは、パックをつくれば、それなりに売れるということだと思います。

そうすると、ふつうはパートを雇って、どんどんお肉を切って、パックにつめて、売る!売る!売る!ということで、“生産性”の計算式的には、「従業員」(分母)を増加させるが、ひとを雇うと「人件費」(分子)も増加する。

そして…
それ以上に「営業利益」が上昇する。そして、ついに“生産性”を押し上げる!という流れになるのだと思います。

しかし、現在は人手不足でパートが集まらない…
お客さんはやってきてくれるのに「なあんだ… 売り切れか… ほかに行くか…」と帰っていってしまう…

記事には、
「ただ店舗だけでなくセンターでも人員は集まりにくくなっており、生産性向上の足かせになっている」と書かれています。

この文中での「生産性」は、まさにオフィシャルな意味での“生産性”のことを言っているのだと、おわかりになると思います。

一方、導入する「食品加工ロボ」の実力については「従来の機械では2人がかりで1時間約550パック作るのが限度だったが、新型では1人で1時間に最大1100パックつくれるようになり」(すごいですね!ひとの4倍の能力です!)

記事では、つまり「生産性は4倍に高まる。」としています。

この「生産性」は「生産能力」のことですよね。
オフィシャルな意味での“生産性”ではありません。
同じ記事に書かれた「生産性」という言葉ですが、二通りの意味で記述されていることに注意が必要です。

「食品加工ロボ」導入で、イオンの“生産性”はどうなるのでしょうか。
「従業員数」(分母)=変化なし
「人件費」(分子) =変化なし(ほぼ)
「営業利益」(分子)=アップ!

そして、この「ロボ」の「投資額は数億円になる」ということですので、
「減価償却費」(分子)=アップ!

結果、法人税も増えるのでしょうね。
「租税公課」(分子)=アップ!

イオンの“生産性”は、間違いなく上昇するのでしょうね。
業績アップ!株価もアップ!するのかもしれません…

すこしうらやましいですね…

今日の記事ネタまとめ

①「イオンが食品加工ロボ(精肉盛り付けなど自動化 人手不足をにらむ)」H29.4.11火 日経新聞
②「中小、大企業上回る(賃金上昇率、人手不足で)」H29.2.20月 日経新聞

2017年06月19日|ブログのカテゴリー:生産性向上