[225] 賃金水準 世界に劣後 時給、20年で9%下落(日経新聞)


日本の賃金が世界で大きく取り残されている。ここ数年は一律のベースアップが復活しているとはいえ、過去20年間の時給をみると日本は9%減り、主要国で唯一マイナス。」H31.3.19火 日経1面

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最低賃金は上昇して、中小企業は人件費がかさむことにゼイゼイしているところもあるというのに、時給が減っているというのは納得がいきません‼

経済協力開発機構(OECD)は残業代を含めた民間部門の総収入について、働き手1人の1時間あたりの金額をはじいた。」同記事

これは…

いまや悪名?高くなってしまった毎月勤労統計(通称:マイキン)の解説をしたときに、ご説明した「給与総額」の考え方とたいへんよく似ています。

すこしおさらいをしておきますと…

支給された一人一人のお給料の額を全部‼足した総額を「(現金)給与総額」というのでした。

そして…

その「(現金)給与総額」を人数で割った商(値)を「名目賃金」というのでした。

さらに…

マイキンではその額の推移を比較して「変動率」を算出するのでした。

そして…

そこから消費者物価指数を加減した結果「実質賃金」を算出するのでした。

この流れはこの図の通りです。


日経の記事でとりあげられているOECDのデータは「総収入について、働き手1人の1時間あたりの金額をはじいた。」とありますので、このマイキンの流れにあてはめると「名目賃金」を「働いた時間」で割り算した額ということになります。

したがって正社員も契約社員もパート従業員もアルバイトも… すべての「民間部門の働き手」のお給料を足し算して、一人当たりの平均を求めて、さらに一人当たりの平均労働時間で除した答え‼ということになります。

一方、

我が国の「雇用者」は「9年連続の増加」を記録しており、グイグイ増えています。

増えているのはパートやアルバイトだということは、以前解説をしました。

[212]女性就業率 5割超す(日経新聞)

これらを総合して考えると、最低賃金は確かに上がっているのですが、効き目があるのはパートやアルバイトであり、まさにパートタイムでフルタイムでない働き方であるので、賃金の総額は膨らんでいるかもしれませんが、それ以上にパートやアルバイトの数が増えているので「働き手の1時間当たりの金額」(平均)は、延びるどころかマイナスになっているのが現実だ‼ということです。

国際比較が可能な17年と97年とを比べると20年間で日本は9%下落した。」同記事

一方…

最低賃金の全国平均は2002年には700円未満だったものが、現在では874円です。

安倍政権は毎年3%程度引き上げ、全国平均1000円を目指している。現在のペースが続けば、2019年の改定で東京都が初めて1000円の大台を超える見通しだ。」H31.3.19火 日経3面 総合2 きょうのことば

このように最賃を上昇させれば「働き手の1時間当たりの金額」も上昇するというのが理屈だと思いますが、この記事にみられるとおり、めざましい効果がまだ出ていないようです。

そこで、ちまちまやっていても成果がでないのでドカン‼と引き上げよう‼という過激?な意見も出始めているようです。


国宝・重要文化財の修復を手掛ける小西美術工芸社のデービッド・アトキンソン社長は…最賃の毎年の上げ率を3%台から5%台に加速させるべきだという。」H31.3.19火 日経1

最賃の形で賃金を強制的に上げることが正しいかは議論が分かれる。ただ、世界的にみて劣る日本の生産性を上げていけないと国際競争に勝ち残れないのは間違いない。」同記事

賃金の論争や動向はつぶさにチェックしておく必要がありそうです。


2019年04月02日