「派遣社員に通勤手当が支給されていない問題」H31.3.24日 中日新聞3面 総合
中日新聞には「問題」としてとらえられていますが、これは長らく派遣業界のお作法のように根付いている商習慣だと、わたしは個人的に認識しています。
これを一方的に批判できるかというと、微妙な感じだと思います。
なぜなら「通勤手当」というのは「手当」ですから、会社の意思をお給料に表現した賃金という性質があるからです。
「手当」の性質については、このみん新でも「美味しんぼ」の「東西新聞社」を引き合いにすこし詳しく解説していますので、ご興味があればご覧ください。
⇒ [102] トヨタ 子ども手当て1100円(中日新聞)
「仕事と出勤にかかるお金」の原理原則は、あくまでも本人負担が原則です‼
ええ??? 納得いかないぜ‼
このような気持ちのかたが多いと思います。
すこし解説してみます。
会社の近所から通勤してようが、何時間かけて通勤してようが、ひとたび会社に出勤したならば、会社に提供する仕事は同じはずです。
遠くから時間をかけて通勤してきた社員の仕事の量や質のほうがレベルが上‼ということはありません。
仕事の量や質を決めているのは、本人の能力なのです。
だから‼本人負担が原則なのです。
しかし…
現実には、会社勤めをしていて、通勤手当を支給しない会社はわずかだと思います。
試しに「ハローワーク・インターネット」を検索してみると、たしかに「上限月1万円まで」など限りを設けている会社はありますが、胸を張って「通勤手当支給なし」となっている会社を、ざっとみたところ見つけることはできませんでした。
では…
そもそもなぜ「通勤手当」を会社は支給するのでしょうか?
わたしも人事部に配属されるまでは、そんなことを一度も考えたことがありませんでした。
「通勤手当」はあたりまえに支給されるものだと思っていました。
「通勤手当」と「交通費」を混同していたのだと思います。
出張した時や営業で地下鉄を使ったときに清算するのが「交通費」です。
「交通費」は会社にとって「経費」に当たります。
「経費」とはマネーを生み出すために必要なお金だということです。
釣りをするときのエサみたいなものです。
土佐のカツオの一本釣りみたくエサなしで魚を釣り上げることがあるかもしれませんが、疑似餌などもエサの一種だと考えると、一般的に釣りには「エサ」が必要です。
この「エサ」に相当するのが「経費」すなわち「交通費」だということです‼
ここよく留意しておいてください!
では…
「通勤手当」が「エサ」になるか?問題です。
先ほども述べましたが、おうちが遠くても近くても仕事の量や質は本人の能力にかかっているのですから「通勤手当」が多いからといって「マネー」を余分に生み出すわけではありません…
この理屈に従えば「通勤手当」は「経費」ではない‼ということになります。
一見「通勤手当」は「経費」に見えますが、「人件費」として区別して認識すべき性質のお金なのです。
「通勤手当」は「ご自宅が遠くても是非我が社に来てください‼」という会社のメッセージを伝えるためのお金だということです。
「会社が」というところに注目です。
派遣の場合「会社」(派遣元)と「働くところ」(派遣先)が異なっているわけですから、もし「会社」(派遣元)が“通勤にお金のかかる仕事は受注しない”という方針をとるならば、通勤にかかるお金は不支給としても、道理がないとは言い切れません。
「会社」(派遣元)にとっては「通勤手当」(人件費)というよりも「交通費」(経費)だからです。
このあたりに派遣独自の「商習慣」が生まれてくる土壌があるのかもしれません。
「同社(パソナ)は『手当支給を選んだのは半数未満』と認めており、減収を敬遠する人が多いとみられる。」同記事
わたしは雇用者でも派遣でもなく、自由業の社労士ですが、たとえば労基署などに行政協力に出向くときに頂戴することになる報酬は、基本的に「交通費コミ」で支給されます。
このあたりは「派遣」にとても近しいと思います。
まあ自由業のわたしは…
あまりに遠方の行政協力ならお断りしますけども…