[094] 副業認める就業規則(日経新聞)… ②

厚生労働省がモデル就業規則をつくって、副業を認め普及させようとしている理由はさまざまに考えることができます。

例えば…

ある会社の総終業時間が短くなったとしても、時間単位当たりの生産性を向上させておけば、会社が生み出す売上ないし付加価値は減ることはない。経営者には生産性向上の努力と成果をまず期待する。そして余剰?となった労働力を他の会社で生かして、本人の得る賃金総額を上げる。そして消費を期待し、景気の循環を目論む。さらに複数の労働経験から個々人が付加価値を生み出す能力が上がれば、起業する人が増えるかもしれず、中小企業が事業承継者不足で廃業しつつも、中小企業全体の生産性は全体として保たれるかもしれない。そこまでいかなくても60歳以上になっても高い付加価値をもったひとが働くことができれば、在職老齢年金が適用され年金支払総額が抑制され………←ココは気が向いたときにでも読んでください。

思いつくだけでもどんどんどんどん書けてしまいます。

風が吹けば桶屋的なはなしなのですが、あながち根も葉もないことでもないと思います。

では、会社に兼業ルールを持ち込むときにコツとはなにか?

事前に届出を行うこと」H29.11.21火 日経新聞

これが大きなポイントです。

会社に内緒でゆるキャラになることは、兼業が制度上可能となったとしても禁止する!ということです。

(ゆるキャラの意味が分からない人は、ぜひ前回[093]を読んでください。)

これにはいくつかの理由があります。

まず、競合他社で働くのはまずいですよね!
会社には①営業秘密なのがありますので、うっかり漏洩するというリスクは会社としては事前に回避したいと思うのは、会社として当然です。

次に、会社には従業員に対して②安全配慮義務というものがあり、働く人がけがをしたり病気になったりしないように環境を整備する、慮(おもんぱか)りなさい!という義務があります。
これを考えるとあまりにハードな就業が予想される兼業先や、体に負担の大きな仕事が予想されるものは「ちょっとやめといてくださいね!」と会社が言うのも無理はありません。

さらに③時間外労働です。

労働基準法では二社以上に勤務した場合の時間外は通算してカウントするルールとなっています。このルール以前に、体は一つですから一社であろうと二社以上であろうと「通算」45時間や60時間を超えるような残業があれば、安全配慮義務と相俟って許可しないという考えは十分ありえますよね。

それとともにテクニカルなところで、2社以上で労働基準法では通算した労働時間により時間外が発生することになった場合、発生したときに働いていた会社が割増賃金を負担するルールとなっています。

たとえば…

労働基準法では1日の労働時間の限度は8時間です。

8時間を超えると時間外労働になります。

これが原則です。

A株式会社に努めているXさんが、A株式会社で所定労働時間の7時間働き帰りました

この時点ではまだ8時間に達していませんので、時間外労働は発生していません。

A株式会社を終えたXさんは、次の職場であるB合同会社に向かいしました。

そしてB合同会社で5時間働きました。

Xさんはこの日「通算」7時間+5時間で、12時間働いたことになります。

時間外は12時間―8時間で、4時間です。

この時間外4時間は、A株式会社で勤務中に発生したのではなく、B合同会社で勤務中に発生したのですから、B合同会社は4時間分の割増賃金を払ってください!

このような理屈になっています。

当然… B合同会社はなんだか損したような気分になりますよね。

そこで兼業許可を検討しているA株式会社は考えるわけです…

兼業を認める場合でも、B合同会社にはなりたくはありませんので、実務上は「兼業先で働いても、自社が残業代を負担するようなことは起きませんよね!もしそのような残業が発生するようでしたら(自社でその分の割増賃金を払うのはお断りですので!)兼業は認めません!」という誓約書にサインをしてもらうことにしましょう!と進言する人事部員がいてもおかしくありません。

兼業を抑制してしまうようなことになるかもしれませんが、ビジネス上の経済合理性は大切ですので、やむを得ないと思います…

むろん、先ほど申し上げた①営業秘密、②安全配慮義務の観点からも、このようなオペレーションがあってもいいように思います。

世の中の動きに照らし合わせて、みんながやってるから「じゃあオレも」論ではなく、法と経済合理性に基づいたルールづくりを「あらかじめ」想定してつくりあげておくことが、大切だと思います。

具体的には就業規則の改訂となりますが、よくわからない… 手続きが面倒だけど兼業OKにしたい!とお考えのときはご連絡ください!

専門的にも料金的にも、このような案件は社労士に依頼するのが、多くの場合経済合理性ある選択だと思います。

今日の記事ネタまとめ

①副業認める就業規則 厚労省、モデル改正案 中小へ普及見込むH29.11.21(日経新聞)

2017年12月19日|ブログのカテゴリー:働き方改革