[060](和解)ボーナス減額分3.7億円支払いへ…②(日経新聞)

後出しじゃんけんを認めさせるのは、とてもハードルが高いというお話を先日しましたが、青山学院の作戦はどのような首尾だったのでしょうか。

記事の中には「財政難を理由に規定の削除と減額を組合に提案。」となっています。

「おおっ!技あり!」と思った方… 就業規則の法律について勉強していますね!

実は「就業規則」は、働く人の「意見」を聴くだけで「改定」ができるという建付けになっているのです。(労働基準法 第九十条 作成の手続)

※「きく」という動詞には、いろんな漢字があり、それぞれ微妙に伝えたい意図が違います。「聞く」「訊く」「聴く」。法律では「聴く」の漢字があてられいます。

条文には「合意」せよとは一言も書いてありませんので、反対意見であっても意見を聴いて意見書を添付して労基署に提出するだけで変更ができることになっています。

「ええ??? じゃあ… 後出しじゃんけんやりまくりですよね…」

そうなります。

しかし!実は最高裁の有名な「判例」がありまして「合理的なものである限り」変更が可能ということです。(合理的でなければ、変更できない。)

この記事だけでは詳細はわかりませんが、もし青山学院の作戦が労働基準法 第九十条に基づいた就業規則の変更をしようとしたのならば、変更の内容は「合理的」である必要があります。

結局青山学院を訴えた教職員313人は、もとの就業規則通りのボーナス支給を受けることと2018年夏まで就業規則通りにボーナスを支払うという約束のもとに「和解」することになります。

わたしが注目したのは、次の箇所です。

組合の担当者は「裁判長が法人の財政状況に問題はないと判断したため、請求を上回る内容で和解できた」と評価した。

判決ではなく、和解ですので、そこに至った理由などは当事者のコメントから推測するしかありませんが、推察するとこういうことかもしれません。

「合意がないまま規定を削除」したことがとがめられたのではなく、合理的であるための財政状況が裁判長によって問題なしとされ「合理的である根拠を失った」ので「就業規則の変更ができない」ことになった。

このように考えるのが理屈だと思います。

むずかしい… ですね。

本屋さんに行くと、就業規則の作り方の書籍はたくさん販売されています。
パラパラ見ると「なあんだ簡単じゃん!」となると思います。

たしかに簡単に作成できるところもありますが、このような「理屈」を踏まえずに、つまり不用意に就業規則をつくると、みずから設定した単純な条文に振り回されることがあるかもしれません。

就業規則をつくった段階で「じゃんけん確定」です!
後出しは許されません!

わたしは長年人事部に勤務しましたが、就業規則に助けられ、就業規則に縛られてきました。
その経験を踏まえると、雑誌のおまけについている「就業規則の作り方」のサンプルをコピーして、そのまま自社の就業規則とすることは、とても危なくてやりたくありません。

少なくとも社労士として、そのようなことはしません!きっぱり!

就業規則は約束ですから、確定じゃんけんですから、うっかりやってしまってからではおそいのです。

就業規則の作成や現行の規則に不安がある時は専門家に相談するのが賢明です。
ご連絡いただければ、わたくしがご相談をお伺いします!
すぐにお電話ください!052-253-8371 10:00-17:00(広告ですね!これ…w)

まる写し就業規則が、会社の実情や身の丈とちぐはぐになっている例は、世の中にはたくさんあると思います。どうか事故がおきませんように…(祈)

今日の記事ネタまとめ

①「ボーナス減額分3.7億円支払いへ(青学、教職員と和解)」H29.4.22土 日経夕刊

2017年09月04日|ブログのカテゴリー:判決以外(認定、申立、和解、懲戒)