まずは事実関係をつかむために、記事の一部を読んでみましょう。
「製薬大手アストラゼネカ(大阪市)に勤務する男性社員3人が11日、会社側から一方的に降格・減給させられ、仕事がほとんどない「追い出し部屋」に配置転換させられたのは不当だとして、人事異動の取り消しなどを求めて東京地裁に労働審判を申し立てた。」
H29.5.12金 日経新聞
わたしもサラリーマンを30年近くやっていましたが、仕事がゼロになったことが3回ありました。振り返ってみると少し回数的に多いですね…w
それでも人事部長になることができましたが、ふり返ってみると浮き沈みが思いのほか激しい勤め人だったのかもしれません。
まあまあそのたびごとに、いろいろとあったということになりますが、このようなときに社員も会社も「人事の問題は賃金の問題」ということに十分留意する必要があると、骨身にしみました。
お給料は「年齢給」や「職能給」や「手当」などの組み合わせでできていることが多いのですが、わたしの経験から言うと、たいていのひとは「年齢給」は下がらない、下げることができない…ということは、すんなり理解できるようです。
そりゃそうですよね。
年齢は逆戻りしませんからね。
でも「職能給」となると、会社の自由だろう…と思う人がおもいのほかいます。
きっと「職務給」と「職能給」を「ごちゃごちゃ」にしているか、そもそも「務」か「能」であるかには関心がないということがあるかもしれません。
「職務」と「職能」の違いについて説明しても、まだ「自説」を信じて曲げないひとが、私の経験では、まあまあいるのですよね…
その無知が会社を危険にさらすことになるかもしれません…。
すこし解説しておきます…。
「職能給」は多くの会社で採用されていると思いますが、「職能給」は下がりません!
下げることができません!
いったん身についた仕事に対する能力は、異動などの都合があっても下がることはないと考えられているからです。身につけた能力が、時代遅れになっている…ということは、技術革新が目まぐるしいIT企業などではありそうなことですが、裁判所は「職能給はさがらない」という考え方をしています。
ここ大切なポイントです!
よく理解しておいてください!
裁判所がそう考えていると言うところです。
こう言っても「裁判所だろ、法律じゃないんだろ…」なんて軽く会議の場で言ってしまう人をわたしは見たことがありますが… まあそんなプリミティブなひとは、さておきましょうか…
みなさんが「さげてもいいんじゃね」と思うのは自由ですが、裁判所の見解が「職能給はさがらない」という点には、留意する必要があります。
留意しなければ、無知と謗(そし)られてもしかたありません…。
※念のため、すこし補足します!)「職務給」というのは、営業部長=10万円、財務部長=12万円、人事部長=8万円といった具合に、仕事ごとに額が設定されているものです。したがって、異動があれば職務給は下がることもあれば、あがることもあります。これは一見合理的に思えるのですが、実際に運用してみると、なかなかやっかいな処遇です。またの機会に詳しくとりあげたいと思います。
(つづく)
次回は降格とそれに係る減給について少し深めてみたいと思います。
今日の記事ネタまとめ
①「「追い出し部屋」異動不当(アストラゼネカ 社員が労働審判)」H29.5.12金 日経新聞