さて、前回は「内定率」について「だれが調べたか問題」を明らかにしました。
すこしおさらいをしておきますと「内定率」は、①民間調査と②行政調査があり、①の民間調査は、日経新聞ではリクルートキャリア、マイナビ、ディスコの3社、中日新聞ではリクルートキャリア調べということでした。
先回には詳しく書きませんでしたが、②の行政調査は「文部科学省と厚生労働省の調査」(H29.3.17 日経新聞)と文部科学省の「学校基本調査」があります。
それでは、今回は「内定率」は「どうやって調べたか問題」を解説してみたいと思います。
まず①民間調査の方法を確認していきましょう。
リクルートキャリアからです。
H29.5.13土 日経新聞の記事には「同社が運営する就活ウェブサイトに登録する大学生約4,700人を対象に、5月1日時点の内定状況を調べた。」と書いてあります。
「5千人近い学生に聞いたわけか。ふむふむ…」
ちょっと待ってください!
「対象に」…「調べた」と書いてあるだけで、4,700人が回答したとは書いてありません。
もしかしたらこの4,700人の中には未回答や無回答、無効回答があったのかもしれません!
同日の中日新聞を見ると…、おなじリクルートキャリアの調査を利用した記事が掲載されていましたが「調査は5月1日から8日にかけてインターネットで実施、1,328人が回答した。」となっています。
はっきりと「回答した」と書かれていますので、無効回答などが含まれているかもしれませんが、未回答は含まれていないと思われます。
つまり1,000人程度のひとが回答した調査であるということです。
ざっくりですが、大学生は1学年57万人ぐらいいます。
その中の8割が就職希望ですので、46万人ぐらいが就活しているということになります。
その中の1,000人の調査であるということです。
統計調査設計上の詳しいことは、専門家でないのでわかりませんが、0.2%程度のサンプリング調査であるという建付けは理解しておいてもよいと思います。
ディスコの調査は「ウェブサイトに登録する学生1259人を対象にした調査」(H29.6.7水 日経)と書かれていますので、実際回答を得たかどうかはわかりませんが、まあまあそんな感じのサンプリングだということですね。
マイナビは「同社が運営する就活支援サイトに登録している学生を対象に9~15日にインターネットで実施した。」(H29.6.20火 日経新聞)と書かれているだけで、対象人数や回答人数は、記事からはわかりません。
いずれもネットで調査しているということですね。
それぞれサイトを見れば、詳しいことはわかるかもしれませんが、ここは「新聞整理」のコーナーですので、記事に記載されていること以上の深入りはしないことにします。
最後に、②行政調査の方法を確認しておきましょう。
「文部科学省と厚生労働省の調査」の方法については「全国の国公私立大から62校を抽出し、就職希望者に占める内定者の割合を調べた。」(H29.3.18土 中日新聞)となっています。
全国に大学は779校あります。(国立26校 公立89校 私立604校)
短大が346校ありますので、合計すると1,125校です。
短大を含めているかどうかはわかりせんが、あえて含めて計算すると1,125校中62校を抽出した。つまり学校の数でいえば、5.5%のサンプリング調査をしたということになります。
割合としては100校中5校程度を調べました!ということになります。
さらに… 調査の人数は「4770人を調べた。」(H29.5.20土 日経)としています。
大学生の数が57万人ぐらいでしたので、0.84%のサンプリングということになります。
これは…「調べた」としか書かれておらず、未回答、無回答、無効回答を含むのか含まないのか、これだけではわかりません。また、民間調査にはネット調査とはっきり書かれていましたが、こちらの方は調査の手法までは記事になっていません。
統計学的には、民間調査と行政調査の手法、どちらが正解なのでしょうか?
どちらも正解なのかもしれませんね。
一度専門家に訊ねてみたいところです。
今日の記事ネタまとめ
①「内定率 解禁前でも34%(民間調査 5月1日時点 9.8ポイント増)」H29.5.13土 中日新聞
②「すでに内定3人に1人(20.3ポイント上昇、就活早まる)」H29.5.13土 日経新聞
③「内定率 解禁日に61%(来春大卒 企業、前のめり鮮明)」H29.6.10土 中日新聞
④「内定率 早くも63%(来春卒、1日時点 ミスマッチの懸念)」H29.6.7水 日経新聞
⑤「来春卒業の学生就職内定率67%(民間調べ、昨年上回る)」H29.6.20火 日経新聞
⑥「大卒内定率 最高の90.6%(2月時点、人手不足続く)」H29.3.18土 日経新聞
⑦「大卒就職内定率90.6%(6年連続で改善■同期比過去最高)H29.3.18土 中日新聞