メトロコマース事件は、小さな記事ではありますが、重要な判決になりそうだということを、前回解説をしました。
正社員とはなにをもって正社員と言うのか…
結構深い急所を突かれている感じがしますよね…
裁判所が「同一労働」をしていても正社員と契約社員との間には「違い」があるのだ…という判決をしたのですから、むしろ「ざわ…ざわ…ざわ…」がおおきくなった感じがします。
そして、この小さな記事…
ここでおわりではありません!
最後のたった4行ですが、とても重要なことが書いてあります!
小さな記事ですがあなどれません。
「正社員との残業代の差は不合理と判断し、原告1人に約4千円を支払うよう会社側に命じた。」
んん??
会社は勝ったのでしょうか?
負けたのでしょうか?
前回の文脈では、会社が勝ったように思えたのですが、このままではよくわかりませんね。
この点をすこし解説しておきたいと思います。
注目すべきは「残業代」という言葉です。
すこしかみ砕くと、東京地裁は「お給料の本体」に、正社員と契約社員の間に差があるのは(理由があれば)OKですが、「残業代」(本体以外)に差があるのはNG!と言っているということです。
すこし、むずかしいですよね。
記事には「残業代の差」と書いてありましたが、実は残業したときの「割増率」のことを問題にしています。
残業をすると、25%程割増して賃金がもらえるということを、知っている人は多いと思います。
「ああ、あれね!」という感じですが、この割増率25%でなくてもいいのですよ!
「ええ??25%以上もらったことないよ!」
「午後10時からのさらなる上積みだろ。」と知ったかぶり…
「じゃあ、休日の割増のことだ!」
残念ながら、そのことではありません。
労働基準法には「賃金の二割五分以上五割以下の範囲内で…割増賃金を支払わなければならない。」となっています。
つまり残業したときに、25%以上支払ってもいい!ということです。
それは就業規則などで会社ごとに決めればいいということになっています。
わたしもそうでしたが、サラリーマンをしていると自分の会社のルールが世界のルールぐらいに思っていますが、そういう考えははやめに改めたほうがいいかもしれません…
正社員に辞めてほしくないという理由で「わが社は正社員の残業割増率を25%ではなく!35%にします!」という会社はありうるということです。
で、実際このメトロコマース社では、正社員の残業代割増率は高くて、契約社員はそれ以下、つまり残業代割増率に正社員と契約社員に差があったようです。
そのポイントを裁判所は問題にして、否定した!というのが、記事の最後に書かれているたった4行の意味だったのです。
労働基準法に定めのある「割増賃金」の主旨は、そもそも残業を抑制する目的があります。
にもかかわらず「わが社の残業代は割増率がいいぞ!」というのを、人材募集の「売り」や退職予防の「歯止め」(インセンティブ)にするのは、本末転倒で見逃すわけにはいかない!ズビシ!と裁判所に指摘された…という感じでしょうか。
でも…
実務上、このようなインセンティブをかけている会社はすくなからずあると思います。
いままではそれでよかったかもしれませんが、ひとたびトラブルになったときには、このような裁判例が実際にあるという事実をつきつけられ、相手方弁護士先生等からグリグリされて、すこし面白くないことになるかもしれません。
会社の就業規則を一度チェックしてみることをおすすめします!
事が起きる前に、就業規則を改定することは、すなわちリスクマネジメントです。
どうか事故がおきませんように…祈
今日の記事ネタまとめ
①「正社員と賃金差「不合理でない」」(メトロ契約社員訴訟判決)」H29.3.24金 日経新聞