「土曜は休みで、休みに働くのだから「休日労働」でしょうよ!」
ごもっともだと思います。
でも、すこし気を付けてほしいと思います。
現在実行計画がまとめられている政府の残業規制案によれば「時間外労働」と「休日労働」を明快に区別しているからです。
それはいままでも残業代の割増賃金の計算上区別していたことで、目新しさはないのですが、この残業規制が罰則付きの法律として施行されたならば「勘違いでした…」は「以後、気を付けてください!」から「では、罰金をお願いします…」に発展する可能性があります。
交通規制の「キップ」のような印象ですが、できることならば「キップ」は切られたくありませんよね。
いまさらひとには聞けないことですが… 「キップ」を切られないために、大切なことだと思いますので、すこし解説してみたいと思います。
わたしが社労士受験のときに使っていた参考書には
「時間外労働とは、法定労働時間を超える労働のこと」
「休日労働とは、法定休日における労働のこと」
と書かれています。
どうやら「時間外労働」を知るためには「法定労働時間」や「法定休日」について知る必要がありそうです。
「法定労働時間」とは、いわゆる「1週40時間、1日8時間」という「法律で定められた」シバリのことです。
「労働基準法」では「1週40時間」つまり…午前9時に出勤して、お昼休憩が1時間あり、午後6時に退社するというパターンを月火水木金の5日間続けると40時間になり、たとえば土曜日に出勤すると「時間外」労働となります。
「なんやて? 休日労働ちゃうの?」
と思った方… とてもいいところに気付きました!そこです!
そうなんです!「ちゃうん」です…
このポイントの理解のためには「法定休日」について解説する必要があります。
「法定休日」とは、同じく社労士受験のときの参考書には「毎週1日付与する休日又は4週を通じて4日付与する休日のいずれかをいう。」となっています。
なんだかむずかしいですね。
「休日」には、2種類あると考えてください。
①法律で定められた「休日」と ②会社で定められた「休日」の2種類です。
②のほうが身近ですよね。
わたしが以前勤めていた会社の就業規則には次のように書かれていました。
第38条(休日)
休日は次の通りとする。
(1)週2日
(2)国民の祝日に関する法律に定める休日
(3)年末年始(年末12月31日から翌年1月3日まで)
人事部などの部署は、土曜と日曜を休日としていました。
さて、これらは「②会社で定められた「休日」」ですが、すべてが「①法律で定められた「休日」」とはなりません。
例えば、平成29年6月は、土曜日が4日と日曜日が4日あります。
祝日はありません。
年末年始でもありません。
したがって、6月の「休日」は、土曜日の4日と日曜日の4日の合計8日です。
この8日のうちの4日が、①法律で定められた「休日」だ!という意味です。
ほんとうに、わかりにくいですね!
「時間外労働」と「休日労働」に絡めて、具体的に説明してみます。
6月の8日ある②会社で定められた「休日」のうち、何日かを休日出勤したとします。
A.8日のうち1日休出した。 ⇒ すべて「時間外」1日
B.8日のうち2日休出した。 ⇒ すべて「時間外」2日
C.8日のうち3日休出した。 ⇒ すべて「時間外」3日
D.8日のうち4日休出した。 ⇒ すべて「時間外」4日
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E.8日のうち5日休出した。 ⇒ 「時間外」4日「休日労働」1日
F.8日のうち6日休出した。 ⇒ 「時間外」4日「休日労働」2日
G.8日のうち7日休出した。 ⇒ 「時間外」4日「休日労働」3日
H.8日のうち8日休出した。 ⇒ 「時間外」4日「休日労働」4日
先日、これからの残業規制には抜け道があるという記事をご紹介しました。
(残業、休日労働の抜け道(日経新聞))
その中で「時間外労働」には「年間720時間」のシバリがあることを解説しましたが、その「年間720時間」の中には、A.B.C.D.の「時間外」とともにE.F.G.H.の「時間外」4日が含まれます。
休みの日に働いた分すべてが「抜け道」の対象になるわけではありません…。
「抜け道」の対象になるのは、E.F.G.H.の「休日労働」のところだけです。
休みの日に働いた分は「休日労働」になる!と単純に考えていると、当局の「キップ」の対象になりかねません!すこし神経をつかいますね…。
法規制はもう少し先になると思いますが、具体的な例でよく考えて、理解を深めて、管理能力の育成などに、いまから準備をしておくことが必要かもしれません。
どうか事故がおきませんように…(祈)