先般は、「イオンが食品加工ロボ」を導入することによって、“生産性”がどのように向上するのかを解説しました。
イオンは加工センターへのロボの導入でしたが、今日の記事は営業支援ツールです。
「富士通は、多数の顧客を回る営業職員の業務を効率化するIT(情報技術)サービスを開発した。1日のスケジュールを入力すると移動手段や面会時に参考になる情報を提示する。生命保険や自動車、日用品などの営業職員の働き方改革につながるサービスとして4月に提供を始める。」としています。
とても大切なことが、この記事に書かれていると思います。
どこが大切なことなのかを確かめるために、この営業支援ツールの導入でどのように“生産性”が向上するのか、“生産性”の計算式を使って、まず確かめてみましょう。
この営業支援ツールを導入した会社の社長として考えてみてください。
「従業員数」(分母) =変化なし
「人件費」(分子) =変化なし(微増かも)
「賃貸料」(分子) =変化なし
「減価償却費」(分子)=アップ!(システム導入費用)
「営業利益」(分子) =???(不明)
「租税公課」(分子) =???(「営業利益」次第…)
仮に「営業利益」を生み出すパワーがシステム導入以前とかわらないとすると、
「減価償却費」がアップした分「営業利益」は減少します。
ざっくりですが「営業利益」は売上から「減価償却費」を差し引いた残りだからです。
結果、“生産性”は上昇しないということになります。
システムの減価償却期間は、基本的に5年間ですので、5年経過すれば“生産性”は、また上昇する?かもしれませんが、システム導入のためのマネーはシステム導入会社に払いっぱなしです。
これではよくないことは明らかです。
このシステムを導入した結果として
「営業利益」を「アップ!」させることは、「マル必!」なのです。
「システム導入で、オレの仕事、楽になったよ!」
「売り上げは、楽に維持できている!」
「残業もなくなったよ!」
これではシステム導入した「減価償却分」を吸収した分「営業利益」=減少、残業が減った分「人件費」=減少しますが、その分「営業利益」が増えるので、全体としては変化なしです。。
“生産性”の計算式に当てはめると、「営業利益」が減少するので“生産性”は下がります…。
業務が効率化し、残業が減ることは、確かに歓迎すべきことだと思います。
さすれば…会社の長寿と繁栄のためには「営業利益」をアップさせる「働き方改革」がどうしても必要です。
「現場」のシステム歓迎の声に、うっかり安心してしまいそうになりますが、システム導入で安心してしまっては「道半ば(みちなかば)」ということになりかねません…。
ご紹介した記事に「富士通は…働き方改革につながるサービスとして…提供する」と書いてあるところは記事的に「技あり」だと思います。
システム導入は「働き方改革のサービス」そのものではなく「働き方改革に“つながる”サービス…」にすぎないというところは大切なポイントです。
それを書き分けている記事に拍手です!
このあたりのことが、よくわかっている記者さんが書いたのでしょうね。
今日の記事ネタまとめ
①「(生保など営業職の働き方)富士通、ITで効率化(1日の予定入力、必要情報表示)」H29.3.27月 日経新聞