[240] 仕事中は全面禁煙 生産性損失「年130時間」(日経新聞)

企業が従業員の喫煙を抑える取り組みを加速する。味の素グループは就業時間に喫煙するのを一切禁じる。社内で認めない例は増えてきたが、社外での行動まで対象にするのは珍しい。」R1.5.23木 日経14面 企業2

仕事中の喫煙に関しては、社労士としてもたびたび質問される「問題」です。

わたしに質問してくるのは、たいてい経営者の社長さんなのですが、その社長さんが愛煙家だったりしますので話は一向に進展しません…

“あの人は煙草ばっかり‼ こちらは仕事をしているのに‼ 給料が一緒というのは納得がいきません‼”

たいてい、このような愁訴をなんとかかわしたいが、都合のよい返答方法はないのか?というのが、社長さんの質問のポイントです。

その質問こそが「都合の良い」質問だと思うのですが、まあそこはさておいたとしても、このまま放置をしていると…その愁訴従業員さんは、簡単に退職してしまうかもしれません。

なにせ世の中は、求人倍率が1.63倍(2019/03現在)ですから、全面禁煙をしている会社に転職する‼というのは、そんなに難しい事ではありません。

この「仕事中喫煙問題」を注意深く聞いていると…

どの社長さんの会話も、不思議と同じような流れに収束していく傾向があります。

その一つが「喫煙時間」についてです。

つまり…

「喫煙時間」は「仕事をしている/していない」論争です。

「仕事をしていない」派の言い分は…

“タバコ吸っている間に、何本電話が鳴ってると思ってるの!”
“書類が滞っているのが、わかりませんか?”

まあこんな感じですが…

「仕事をしている」派の言い分は…

“喫煙場にいくと、いろんな人と交流できて、人脈が広がるのだ!”
“一服すると…いい考えがうかんでくるんだよなあ”

まあこんな感じで、お互い主張のステージがそもそも違っていますので「議論」にならず「水かけ論」になるだけで「問題」は一向に解決しません。

こうなると…

「またか… やれやれ…」と思ってしまいます。

ところが!

記事では、喫煙に関して新理論?が紹介されており、たいへん興味を持ちました。

米研究機関の調査では、喫煙者は体調への悪影響などから通常通り仕事をこなせなかったり、欠勤したりすることによる『生産性損失時間』が年に130時間に達すると試算する。非喫煙者より52時間長い。」同記事

つまり就業時間中に中抜けしている!理論ではなく、喫煙には健康被害があるのだ!理論となっているところが、新鮮なのです。

確かに煙草を吸わないひとでも風邪をひいたり怪我をしたりして仕事に穴をあけることはあるのですが、調査によると喫煙者の方が、年間78時間(130時間―52時間)分の生産性が低い!ということを記事は言っています。たとえば…具体的には、喫煙者のほうが風邪をひきやすく、会社を休みがちになるということでしょうか。

仮に、ある喫煙者の時給が1,650円程度だったとします。

年間78時間分の生産性が失われるわけですから…

1,650円 × 78時間 =128,700円/年

128,700円 ÷ 12カ月 = 10,725円/月

おおよそ月に1万円程度の損失があるということになります。

ちなみに時給1,650円というのは、年収が約350万円の人です。(フルタイム換算)

この前提で考えると、職場で煙草を吸っているならば、煙草を吸っていないひとよりも、月々1万円お給料がすくなくてもよい!という理屈になります。

しかし… ただちに喫煙者のお給料をさげるわけにはいきませんし、いままで会社が喫煙を認めていたのも事実ですから、そこは減給ではなく、そもそも生産性が喪失する原因を排除しようと決断したということです。決断するのはもちろん会社です。

お給料をさげるのではなく、生産性阻害する原因を断ち切ろう!という発想です。

繰り返しになりますが、これは社員がたばこを吸うため頻繁に席を外すので生産性が低下すると言っているのではない!というところに注目が必要です。

企業は利潤を追求するためにある‼という企業のそもそも論に立ち返って、生産性を低下させる原因を会社から排除する‼という理屈を構築しているところが、いままでの「水掛け論」とは違っているところです。


味の素はまず本社で2020年3月までに社の敷地から喫煙所を撤去し、就業時間内の喫煙を禁じる。同7月までに工場を含む全事業所(グループ会社除く)で、屋内を前面禁煙とする。」同記事

喫煙者にとっては、かなり強硬策と感じると思いますが、会社の理屈は全体最適を優先する!ということを決めたわけですから「個人的には忍びないのですが… 会社が決めたことです。相済みません!」という感じです。

罰則はないが、就業時間であれば営業などで会社を離れる間もたばこは吸えない。」同記事

会社の全体最適を求めるという理屈であれば、場所シバリではなく、人シバリの概念ですから、ここまで要求できるということだと思います。

就業時間外を含めて、すべての時間に禁煙をもとめると、古典的な「喫煙権」論争を誘発してしまいそうですが、巧みにそこは「就業時間」に限定して回避しているところが秀逸だと思います。

個人的なことですが、わたしは煙草を吸うのをやめて、今年で丸12年になりました。

わたしは当時セブンスターを1日少なくとも二箱は消費するヘビースモーカーでしたので、煙草が切れると、頭の中は煙草のことでいっぱいになっていました。仕事どころではありません!

はたして…

味の素の喫煙者社員さんは、禁断症状を乗り越えられるのでしょうか?

会社の方針ですので、是非頑張ってほしいと思います!

(ちなみにわたしは、禁煙してからたばこのことをすっかり思い出さなくなるまで、約2年かかりました…)

高校生はトイレや屋上で煙草を吸っているところを、先生に見つけられ…
停学処分になるのがお約束でしたが…

大人はきっと大丈夫だと思いますが、それでも禁を破るサラリーマンのイメージは…

このイラストの不良のようなイメージなのでしょうか…

「懲戒上等!」

な~んちゃって 草草草www

2019年05月30日