「衣料品通販サイト『ゾゾタウン』を運営するZOZOは13日、アルバイトを新たに2000人採用すると発表した。」R1.5.14火 日経13面 企業2
新たに採用するアルバイトが2000人ですから、中小企業と比べるまでもなくけた違いです。
「時給は最大3割増の1300円に引き上げる。… 現在の時給は1000円で、勤務日数が週3日以下の場合は1割、4日なら3割増やす。一定の実績を上げると月最大1万円の賞与を支給する。」同記事
なるほど…
たくさん働いてくれるバイトをウェルカム!したいということですね。
この記事が掲載された朝には、テレビでもこの話題をとりあげて、街の若者にインタビューをしていました。
“時給1300円はありがたいですね!”
“いまは1000円ですが、時給はあがりませんので…”
などなど…
おおむねZOZOの1300円時給を歓迎するようなコメントが多かったと思います。
しかし…
バイト・パートあるある!に引っかかってこないか?
わたしは職業柄そこが気になります。
少し解説しますと…
103万円の壁!というヤツです。
お給料が年間で103万円以上になると、所得税がかかる!といお給料の税金ルールです。
一気に3割も時給が上がると!
この年間103万円のラインを軽々?超えてしまうことにならないか?
そういう「きまり」なんだから、従うしかない…
そう言ってしまえばそれまでなのですが、現実の実務問題として、よく相談を持ち掛けられるポイントです。
社労士としては、税務ということであれば専門外ということになりますが、時給の設定や働く日数や時間ということになると、専門家として対応すべき課題です。
さて…
わたしの仕事のお話はさておきまして、
ZOZOでバイトをする本人さんは、まず3割時給が上がって単純に喜ぶと思うのですが、お給料明細を見て「所得税」という見たこともない項目でお給料が引かれてがっかりすることになるかもしれません。
また多くの会社がこの103万円のラインを基準にして、扶養者を認めるか否かを決めていますので、
お父様やお母様などの会社の扶養控除が消滅して、お父様やお母様の所得税が増える… ことになります。
バイトをしている本人よりも、扶養をしているお父様やお母様のほうが収入がよいと思いますので、本人さんが扶養からはずれることによって、徴収される所得税のインパクトは、本人さんは大したことがなくても「家計」としては、大きいということになりかねません!
この理屈は少し難しいのですが…
実は多くの会社でたびたび見かけられる「バイト・パート家族会議あるある」です。
それはそれで家族会議の結果は、無視してスルーして…
自分は自分だから‼ということで、本人さんがさらに稼ぐとどうなるか?
年間のお給料が130万円を超える日がくると思います。
そうすると…
バイトをしている本人さん自身が、国民健康保険などに加入する必要がでてきます。
20歳以上であれば、国民年金にも加入しなければなりません。
どうしてかって?
法律で決まっているからです‼
(働く!と選択したのは本人さんですから、ここはどうしようもありません。)
さらに…
働く時間がZOZOの正社員の4分の3になれば、ZOZOの健康保険と厚生年金に入らなくてはなりません。
本人さんは、国保や国年のように自分で社会保険料を支払わなくてよくなりますが、当然社会保険料は、所得税と共にお給料から天引きされます。
所得税と社会保険料の本人負担分の合計は、ざっくりですが15%から20%程度だと思われますので、昇給の割合によっては昇給分が吹き飛んでしまうこともあるかも…
昇給してうれしいけど…
昇給分は税金と社保料に消えてしまった…
こうなると手取りが増えませんので…
なんのために働いているのかわからなくなります。
さらに、会社(ZOZO)も新たに社会保険料を負担しなければならなくなります!
とはいえ…
このようなことはZOZO人事部では、きっと織り込み済みのことだと思います。
現状のアルバイトが約1,800人。新規採用が2,000人。
合計3,800人が対象になるわけですから、影響の範囲は織り込んだうえでスタートに踏み切ったと考える方のが普通です。
大企業おそるべしです…
こうなると中小企業は追従できません。
ただし、社保料とともに、ZOZO人事部では税務や社保手続きやチェックが当然増えるはずです。
社内の事務体制もそれなりに整備が必要ですが、大企業ゆえにたぶん心配は無用でしょうね。
「時給の引き上げは既に勤務するアルバイトも含め6月1日から実施する。」同記事
もうまもなくスタートです。
首尾よくスタートできるといいなと思います。