[231] 国保の赤字450億円に縮小 17年度(日経新聞)

厚生労働省は12日、自営業者らが加入する国民健康保険の赤字が2017年度は450億円だったと発表した。16年度と比べ1011億円縮小した。」H31.4.13土 日経5面 総合4

これは日経新聞のわずか14行の小さな記事でした。

しかし…

なんとも味わい深い記事です‼

社会保険と少子高齢化と人手不足の実情が、じわり‼とにじみ出ていまして、わたしは何度も読み返して味わいを確かめました。

そもそも社会保障費は増え続けているのに対して、国保の赤字だけが縮小するというのは「おかしな話」です。

27日に成立した2019年度予算は一般会計の総額が初めて100兆円を突破し、歳出の3分の1を占める社会保障費は34兆円と過去最高を記録した。」H31.3.28木 日経5面 経済

このように全体の社会保障費は増え続けているのですから、国保の赤字縮小には理由があるはずだ‼と思うのが道理です。

記事には、二つの理由が記事に記されていました。主語はもちろん「国保」です。

理由①
加入者の減少で給付費が減った

理由②
企業の健康保険組合などからの交付金が増えた。

最初の引用記事に「自営業者らが加入する国民健康保険」と記されており、国保にはわたしのような自営業者ばかりが加入しているような書きっぷりですが、ほんとうは定年退職したサラリーマンの多くが加入するのが国保なのです。

「自営業者」の部分よりも「ら」の部分が重要なのです‼

(「ら」には定年退職したサラリーマンが含まれます。)

自営業者は確かに減少していますが、国保の赤字を縮小するほど劇的に減少しているわけではありません。

この加入者の減少は「定年退職したサラリーマン」の加入が減少した結果、全体の加入者が減少したと考えられます。


つまり定年退職したあと「悠々自適」で自宅でごろごろしたあとに、日課のようにTSUTAYAまで散歩する元サラリーマンばかりではなくなり、多くの元サラリーマンが再びが働きに出ている‼ということです。

しかもフルタイム的に働いて協会けんぽなどに加入し始めているので「加入者の減少」となったように読むことができます。

むろん長年勤めた会社に65歳まで継続雇用される仕組みも浸透してきていますので「悠々自適」(=自宅でごろごろ)が先送りにされ、国保にスイッチするタイミングが遅くなった‼ので国保加入者が減少したと考えることもできそうです。

この短い記事の中に、サラリーマンの晩年事情が透けて見えます‼

理由②はどうでしょうか?

企業の健康保険組合などからの交付金」???

企業の健保組合とは、ソニー健康保険組合とかトヨタ自動車健康保険組合とか楽天健康保険組合など、多くは大企業が独自に設立している健康保険の仕組みのことです。

そこから気前よく?都合よく?国保がお金をもらえる仕組みとは、どのような仕組みなのでしょうか?

これは「前期高齢者医療費の財政調整」と呼ばれるものです。

「前期高齢者」とは65歳~74歳の人のことです。

75歳以降のすべての人は、いままで加入していた健康保険を離脱して、誰しも同じ「後期高齢者医療制度」というものに加入することになっています。

さすれば…

74歳までは「協会けんぽ」や「国保」や「健康保険組合」や「私学共済」や「公務員共済」など、個々人の都合によって、それぞれ別の健康保険に加入しているということです。

それぞれの健康保険の仕組みでは、加入者の数のみならず年齢構成もそれぞれです。

特に65歳から74歳の間の年齢の人は、65歳までの継続雇用を終えて、大企業勤務のサラリーマンであれば「健康保険組合」から「国保」にスイッチする人が多いと思われます。

さすれば…

「前期高齢者」は「健保組合」に少なく「国保」に多くなります。

つまり65歳から74歳の前期高齢者が加入する医療保険は、国民健康保険に偏っているということができます。

病気にり患する確率が高くなる65歳以上の年齢の人が「こぞって」国保に加入してくるとなると、国保はたまったものではありません。

65歳以上で働く人が増えたとしても、押し返せるだけの力はありません。

本来…国民の健康は社会全体で支えあう‼というのが筋ですから、これらの不均衡を是正するために、前期高齢者の加入率が低い大企業の健康保険組合のようなところから納付金を拠出し、前期高齢者の加入率が高い国保のようなところに交付金が支給される仕組みがあるのだ‼ということです。

ちなみに、この「納付金」を集め「交付金」を支給するために、一旦お金を集めて分配する…飲み会の幹事のような役割を担っているのが「社会保険診療報酬支払基金」という組織です。

これが、理由②に記された「企業の健康保険組合などからの交付金が増えた。」仕組みの正体だということです。

17年度の加入者数は2870万人で16年度から142万人減った。」同記事

前期高齢者がどんどん働きに出て、国保から離脱することによって、交付金の役目が終了する日が来ることがあるのでしょうか。

この短い記事から、日本の将来や社会保障の姿までもが透けて見えると、私は思います。

このたびの記事は「健康保険」カテゴリーの話題でしたが「年金」カテゴリーでも、働く高齢者を前提に仕組みを改定しようという動きが報道されています。

「年金」カテゴリーについては、また別の機会に解説したいと思います。

2019年04月23日