[216] バイト職員に賞与認める 大阪高裁判決 原告が逆転勝訴(日経夕刊)

判決理由で、大学の賞与額が基本給に連動し、就労自体への対価の趣旨を含む点を踏まえ『有期契約社員へは正社員の約8割の賞与があるが、アルバイト職員に全くないのは不合理だ』と指摘」H31.2.16土 日経夕刊9面 社会

これは「大阪医科大の元アルバイト職員の女性が、賞与の不支給など正社員らとの待遇格差は違法だとして大学側に差額の支給を求めた訴訟」だったのですが、裁判所は「元アルバイト職員」の訴えを認めました‼

ここでわたしがたいへん気になるのは「アルバイト職員」という身分?のことです。

そもそも「アルバイト」とは何ぞや?ということです。

法律には「パートタイム労働法」はあっても「アルバイト労働法」という法律はありません。

たとえば6か月とか1年契約で働く「有期契約」の人については、労働契約法という法律の中に20条という条文に待遇のことは定められていますが、この労契法の中にも「アルバイト」の文字は見当たりません。

社労士の立場から申し上げますと…「アルバイト」という言葉は、よくよく考えると根拠の乏しい、たいへん不確かな言葉といわざるを得ません。

「アルバイト」に対して「パート」は法律上の言葉です。

働く時間が正社員に対して「短い」人を「パート」と言います。

法律でさだめられている働き方を、いまいちどおさらいをしておきますと、次の表のようになります。


ポイントは「働く時間」が「正社員」に比べて「同じ」(通常)か「短い」かということ【横軸】と、定年まで働く(無期)タイプなのか、契約書に書かれた6か月とか1年などの限られた期間を区切って働くタイプなのか【縦軸】という2点です。(「日ごと」に働く人は、そもそも1日ごとに働くのですから「無期」はあり得ないので、斜線で消してあります。)

これらを掛け合わせると、先ほどの表が完成します。

いわゆる「アルバイト」というのは、働く時間が正社員よりも「短く」かつ定年まで働く約束をしていないことが多いと思いますので「有期」ということになります。

さすれば…

「アルバイト」はすなわち「パート(有期)」と考えるのが法律上は妥当だということになります。

大阪高裁の江口としこ裁判長が「有期契約社員へは正社員の約8割の賞与があるが、アルバイト職員に全くないのは不合理だ」と指摘した背景には、「アルバイト」すなわち「パート(有期)」であるという考え方が背景にあると思われます。

実はこのあたりの法律整備はちゃくちゃくとすすんでおりまして、従来の「パートタイム労働法」と「労契法20条」を合体させて「パートタイム・有期労働法」として独立させることになっています。

下の表のオレンジで色付けした範囲が「パート有期法」の守備範囲になる予定です。


この「パート有期法」では「有期雇用労働者と正規雇用労働者間の不合理な待遇の相違を禁止」するとしており、不合理であるかどうかは「個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して」判断するとしています。

なんだかむずかしくてピンときませんが、ようするに筋(スジ)は法律で通しているので、具体的には事例をいちいち吟味して白黒つけます!ということです。

基準が明快に見えない分、大丈夫かな?と不安な気持ちになります。

今のうちからお給料の違いや時給の違いをはっきりと説明できる準備をしておくことが大切だと思います。

この法改正は大企業2020年4月1日 中小企業2021年4月1日ですが、法改正まではセーフ‼ということではありません。

基本的な法律のフレームはパート法と労契法20条ですでにできあがっているのですし、それだからことこの記事のような高裁の判決がでているのですから、準備はいますぐにすることが賢明だと思います。

なにからはじめるか?

就業規則などを使って、正社員とパートやバイトのお給料や休日の数などを一覧表にしてみることです。

リストアップすることで「よく見える化」することが大切です!


2019年02月28日