「エーザイは18日、早期退職の応募に300人が応じたと発表した。100人程度を見込んでいたところ3倍の応募があった。」「応募者は約3400人いる全従業員の9%に相当する。」「45歳以上で勤続5年以上の社員が対象。」H31.1.19土 日経新聞11面 企業
新入社員まで含めて‼ 11人に一人が早期退職に応募した‼ ということですから、この早期退職の対象年齢である45歳以上の中の割合は「かなり」たかいということになります。
エーザイ株式会社の有価証券報告書によると2018年3月31日現在の従業員の平均年齢は44.7歳です。
つまりエーザイの平均年齢が早期退職の対象年齢である45歳とほぼ一致していますので、年齢別の従業員の数が正規部分布しているとしてほぼ倍‼対象年齢の45歳以上の5人に一人ぐらいが応募したのだ‼と考えてもおかしくはありません。
わたしも長年勤めた会社を早期退職で辞めたひとりですが、わたしが退職した会社の全従業員に対する早期退職者の割合は2%程度でしたので、エーザイはわたしのいた会社の4.5倍程度の「需要」があったということになります。
記事には早期退職者を「100人程度と見込んでいた」とありますので、100人/3400人で約3%をエーザイの経営陣はもともとは見込んでいたということです。
わたしの経験の2%とまあ同程度ということになります。
ところが蓋を開けてみると、予想の3倍だった…ということです。
「エーザイの19年3月期連結純利益見通しは前期比16.7%増の605憶円。」同記事
エーザイの売上を少しググってみますと…
2011年に7600憶円あった売り上げが2017年には5400憶円程度に下がります。単純な比率で71%ですから、約30%程度の売り上げを失ったことになります。その後売り上げは回復基調で2019年には約6400憶円。
この事実ををグラフにしてみるとV字回復しているように見えます。
会計的にはめでたしめでたし…という絵になっているように見えますが、人事屋のわたしとしては業績が低迷して売上の底をうろうろした2013年から2017年の5年間に社員の心の中に「なにか」変化があったのかな?と思ってしまいます。
5年というのは決して短い期間ではないからです。
この記事だけでは詳しいことはわかりませんので、わたしの個人的な意見にすぎませんが、会社の業績が不振になると社内の空気はおそろしくよろしくなくなる場合が多いと思います。
先ほどのイラストでピースサインをしているような社員はほとんど絶滅したような状態になり…
よくはじまるのが「犯人さがし」です。
そんなことをしても業績は回復しないと冷静になれば無益なことだとだれでもわかるのですが「つい」そのような行動にでるひとが増えてくるのを、わたしもかつて見かけたことがあります。
人のせいにするのは非常に甘い誘惑があると言わざるを得ません…
記事から読み取れる早期退職者の割合が、わたしの常識を超えていたのでもしや…とこのことが少し心配になったということです。
「総額約66億円の割増退職金を支払う。」同記事
早期退職者300人に対して66億円ですから、一人あたり2,200万円ということになります。
しかも「割増」分が平均で2,200万円ですから、就業規則などに定められた基本的な退職金の額と合算すると、結構な額になるのだろうなということがわかります。
それは個人に着目した視点ですが、会社の視点とすると300人に対して66憶円というのは、一人当たりの年収を仮に1000万円とすると、2.2年分の人件費にあたるという計算になります。
注)平均年収1000万円というのは少し高すぎるのでは?と感じられる向きもあるかもしれませんが、エーザイ株式会社の第106期有価証券報告書によると2018年3月31日現在の従業員の平均年間給与は10,446,630円と報告されています。すこし少なく見積もっても1000万円といえます。
総額の66億円は、連結純利益605億円に対して11%程度の割合になりますので、すくない額ではないと思いますが、残った人材で頑張る限り2年3か月程度で解消される額だと考えることもできます。
「従業員の減少は、例年40人程度の新卒採用を100人規模に増やして補う。中途採用も拡大する。」同記事
このスキームが首尾よくすすめば、エーザイさんの平均年齢は若返り総額人件費も減少するはずです。
あくまでも一般論のお話ですが、この「計算上」の目論見は目論見として成立すると思うのですが、人事屋的な視点では早期退職実施後の会社の空気や残された社員のモチベーションの変化が「計算上」の目論見と必ずしも一致しないことが多いので注意が必要です。
それでも前にすすまなければなりません。
会社の経営に勇気と忍耐が必要だといわれることがありますが、まさにこのことを言っているのかもしれません。
ガッツだぜ‼