[207] 国家公務員の定年延長法案 通常国会提出見送り(中日新聞)

えええええ‼ 見送り???

このタイトルはH30.1.20日に掲載された中日新聞の記事の見出しです。

どうしてこんなリアクションをとるかと申し上げますと、ほんの11日ほど前に国家公務員の定年延長をけっこうやる気まんまんに感じられる記事が日経新聞に掲載されていたからです。


“公務員 60歳から給与7割 定年延長 賃金カーブ抑制 法案、民間に波及期待” H31.1.9水 日経1面

それが掲載から11日目に中日新聞に覆されてしまうとは…

まずは1/9水の日経新聞の記事から見ていきましょう。

国家公務員の定年を60歳から65歳に延長するための関連法案の概要が判明した。60歳以上の給与水準を60歳前の7割程度とする。60歳未満の公務員の賃金カーブも抑制する方針を盛り込む」H31.1.9水 日経1面

 

賃金カーブというのは、こんなカーブのことです。
(横軸=年齢 縦軸=給与額)


賃金カーブの抑制とは、特に60歳前に実線から点線に乗り換える‼というイメージです。

現在でも60歳定年以後は「再任用制度」というのがあって、60歳の定年時点でお給料はさがるけれども、65歳までは働ける仕組みがあります。その「賃金カーブ」は60歳時点でいったん途切れたこんな感じのグラフになるはずです。


再任用制度のままだとブルーのBの面積分の人件費がそっくり増えてしまいます。


そこであらかじめ赤色のAの部分の面積(人件費)を減らして、Bの面積(人件費)からAの面積分の抑制をしよう‼という考えです。

もちろん働く人にとっても再任用よりも定年が延長された方が雇用カテゴリーとしては安定しているといえますので、メリットがないわけではないという理屈になりますが、本当にそうでしょうか?

60歳に達すると原則として管理職から外す『管理監督職勤務上限年齢(仮称)』の制度をつくる。」同記事

むむむ… 実態は再任用制度とあまりかわらない「におい」がします…

専門性が高く後任を見つけにくいポストなどに限って留任を認める例外規定も設ける。」同記事

この「例外規定」であれば継続してポストに就き続けることができるわけですから、現役時代から「専門性が高く後任を見つけにくいポスト」を目指す‼キャリアができあがってしまうかもしれません。そうなると… 「後任」が育っていると都合がわるいわけですから… 教えない、育てない、蹴落とす…などの行動が主流になりかねません。なんちゃって…

そんなことあるわけない…と思いながら、どこか不安を感じます。

民間企業であれば、増加する人件費を賄うために生産性向上を試みたり、下町の話にでてくる佃製作所のように新製品の開発に投資をしてあたらしいインカムを期待するとか、やりようがあるといえばあります。

それにたいして公務員の場合は、頑張れば税収などが増加するということはあまり期待ができません。

したがって公務員の制度改革は、なかなか経営が厳しい民間企業のお手本になるはずであり、その意味で日経新聞の1面に掲載されるニュースバリューがあるのだと思います。

四月の統一地方選と夏の参院選が重なる選挙イヤー。定年が延びる分の人件費に税金が充てられるため、野党から『公務員優遇』との批判を招きかねないと判断した。」H31.1.20日 中日新聞3面 総合

だれが見てもAの面積よりもBの面積の方が大きいのですから、総額人件費が増加する可能性が高まるわけです。

課題は延長後の給与を七割程度に減らしても、退職するはずだった職員が残る分、新規採用を抑制しなければ総額人件費は増える点。」同記事

おいおい‼

この改革案は総額人件費が増加することを前提としていたならば、日経1面に掲載されるほどのニュースバリューがなくなってしまいます。

なぜなら人件費増加を前提とした制度改定なんか…

だれにでもできるからです‼

人件費のコントロールは、賃金カーブも大切ですが、それとともに年齢別役職別職務別の人員構成のみならず、採用退職などの経年変化をよく見通して算出する必要があるということです。

この点を見越して早期退職などを実施するケースもあります。

最近では医薬品メーカのエーザイが早期退職を募った記事が掲載されていました。

次回はこの早期退職と総額人件費の関係をご紹介したいと思います。

2019年01月29日