[205] フリーランス支援 法整備 厚労省、労災適用など検討 ①(日経新聞)

厚生労働省はフリーランスの仕事中のケガや病気を補償する労災保険の適用や、取引先企業と対等な立場を保つための契約ルールの整備を検討する。」H31.1.10木 日経3面 総合2

わたしも自由業の社労士として働いていますので、カタカナで言うところの「フリーランス」にあたると思います。

かたや社労士になるための国家試験には「労災」の科目があり、どんなひとが「労災」に加入できるのかできないのかについて、結構しつこく?試験問題に出題されてきました。

それだけ実務で大切なポイントだということだと思います。

代表的なポイントが「取締役は労災に入れるか?」問題です。

中小企業の現状は「社長」や「取締役」と名刺に書いてあっても、従業員とかわらず現場の仕事をしていることはよくあることです。

では従業員とかわらないので社長が労災に加入できるかというと、答えは…「No!」です。

社長の労災加入はできません…

ではなぜ労災加入できないのでしょうか?

「社長だから」とか「取締役は経営者だから」とか「経営者で労働者でないから」というのは、答えに近いようでまだ答えではありません‼

ポイントは「業務執行権」があるかないかです‼

「業務執行権」とはなんでしょうか?

このあたりまで掘り下げると多くの社労士受験生は、ギブになるひとが多いと思います。

「労災」のテキストには「業務執行権」と書いてあるにも関わらず「業務執行権とはなにか」ということについては書いてないからです。

「業務執行権」とは「会社法」上の言葉です。

会社法第348条(業務の執行)
取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く。以下この条において同じ。)の業務を執行する。

これが「業務執行権」の根拠となる条文です。

ここでは…取締役会を置いていない会社(取締役会非設置会社)では「取締役」は全員「業務執行権」がある‼と言っています。

「取締役会非設置会社」とは一般的に小規模な会社だと思います。このような小規模な会社の「取締役」は「労災には加入できない」ということです。

では…「取締役会」を設置している会社の場合はどうでしょうか?

会社法第363条(取締役会設置会社の取締役の権限)
次に掲げる取締役は、取締役会設置会社の業務を執行する。
一 代表取締役
二 代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの

「代表取締役」は常に「業務執行権」があるが単なる「取締役」の場合には「業務執行権のある取締役」と「業務執行権のない取締役」が発生する可能性があります‼と言っています。

わたしの手元に社労士試験を受験した時のテキストがあります。その中には社長などの「取締役」について、このように書かれてあります。

(1)法人の取締役等(昭34.1.26 基発48号)
 労働者に該当しないため、労災保険は適用されません。ただし、業務執行権を有しておらず、事実上、業務執行権を有する他の取締役等の指揮・監督を受けて労働に従事し、その対償として賃金を受けている者は、労働者として取り扱い、労災保険が適用される場合があります。」2014年版 U-CANの社労士 速習レッスンP253

これは…取締役はほぼほぼ労災加入はできません‼ ただし取締役会がある少し大きな会社で「業務執行権のある取締役」を決めた結果「業務執行権のない取締役」が決まることがあるわけですが、この「業務執行権のない取締役」だけは労災加入の余地があります‼という意味なのです。

むずかしい‼

ここだけに注目すると「取締役」たるものは、実態がどうであれ労災に加入できないのだ…と柔軟性のない乱暴な制度に見えてしまいますが、そこを覆して労災に「特別」に加入できる仕組みがこのルールとは別に設けられています。

えぇ… まだ奥があるの?って感じですよね。

ここ…つまり「特別」に加入できる仕組みを説明するとようやく‼ フリーランスの労災適用についてのお話にもどることができそうです。

すこし長くなりましたので、次回に続きを書きたいと思います。

(つづく)

2019年01月22日