「政府が推進する会社員の兼業、副業について、独立行政法人労働政策研究・研修機構が企業や労働者にアンケートをしたところ、企業の75.8%が「許可する予定はない」とし、労働者も56.1%が「するつもりはない」と回答したことが分かった。」H30.10.2金 日経34面 社会
これを読んでわたしは「蜜月ですねぇ~」としみじみしました。
蜜月なのは会社とサラリーマンの関係のことです。
サラリーマンの仕組みがうまく機能しているということです。
会社が兼業・副業を禁じるとき、多くの場合その理由として「業務専念義務」を根拠とします。つまり、複数仕事を抱えていると「本業」がおろそかになってしまう可能性があり、そんな中途半端な労働力の提供ではお給料は払えません!という理屈です。
これは筋の通った理屈だと思います。
お金を頂戴する仕事をするとなると、思いのほかエネルギーを使うことになります。お勤めをしながら、そのほかの仕事をするというのは体力的にも精神的にも負担が大きいと思われるからです。
中には昼間はOLですが夜はラウンジで「お勤め」をしていて、その副業で本業のストレス解消をしている!という人にわたしはかつて出会ったことがありますが、少数派だと個人的には思います。
会社は自社の中で自社のみのことを考えてエネルギーを使ってほしいと思い、働いている人もその方が都合がよいと考えているからこそ、このような「蜜月」的な調査結果になっているのだと思います。
「政府は2017年3月にまとめた働き方改革実行計画の中で、兼業や副業を「新たな技術の開発、起業の手段、第二の人生の準備として有効」としたが、浸透していない実態が浮き彫りになった。」同記事
これも理屈はその通りなのですが、それ以上に会社と従業員の依存関係のきずなが強いということです。
かつて人事部で勤務した私の経験から申し上げると、お勤め人をしている人の中で「第二の人生の準備」をご自身のこととして具体的に考えているひとは、残念ながらほとんどいません。
「なんとかなるだろー」
将来や定年後のことはその程度にしか思っておらず、それよりも翌月の人事異動の発令の方が深刻な問題ダ‼…と思うのがおおくのサラリーマンの姿だと思います。
いつからそうなったのかはわかりませんが、そのように行動する人が多かったので、自分もいつの間にかそうなってしまっていた…というのが実感に近いのではないでしょうか。
でもそれは個人に責任があるのではなく、会社の仕組み自体が「業務専念」意識を醸成し、それに従業員も価値を感じるように給与や賞与で報いる仕組みになっているからです。仕組み上、そこには深い絆ができることになっているのです‼
兼業や副業が入り込むすきはありません。
しかし、少数派かもしれませんが、中には将来のことを具体的に考えて働いている間から準備を始める人もいます。例えば自己啓発制度として自ら必要と思われる通信教育などを受講できる制度を備えている会社もあるかと思いますが、それらを申請して資格取得に励むような社員は、この少数派に属するひとかもしれません。
そのような従業員はそれらの資格を活用して兼業や副業をするというよりも、転職や独立のための準備をしているひとが多いようにわたしは思います。どこかに会社への不満があるのかもしれません。
「労働者へのアンケート結果では、兼業や副業に前向きな「新しくはじめたい」「機会・時間を増やしたい」と回答している人は計37.0%だった。」同記事
この37.0%のうち一定の割合の人たちは、会社の補助金で受講した通信教育が終了して、はれて‼資格試験に合格した日には、転職してしまうのですよね…
会社にとっては要注意?諸刃の剣?痛しかゆし?どれが適切なのかはわかりませんが、いずれにしても人事部としてはモヤモヤした気持ちになることは確かです…
ちなみにこの度のアンケート調査を行った長い名前の組織(独立行政法人労働政策研究・研修機構)は、JILPTと書いて「ジィルピーティー」と発音します。英語名=The
Japan Institute for Labour Policy and Training というそうです。漢字よりも英語の方が、なにをしているところか、イメージがつかみやすいですね。