[180] 労働条件の通知 メールで可能に 厚労省、来春から適用(日経新聞)

厚生労働省は、企業が労働者に書面で交付すると定めている労働条件の通知方法を、電子メールなどでも可能にするよう規制を緩和する。」H30.10.8月 日経3面 総合・経済

「そんなものあったっけ?」

わたしも勤め人時代に人事部に配属され、採用業務に携わるまではそんな感じの知識レベルでした。

しかし、最近ではパートや有期契約者の採用などの場面ではかなり浸透してきたように思います。むしろ新卒などの正社員採用の場面がすこし遅れているように個人的には思います。

会社がある人を採用して働き始めるまでの手続きをすこし整理しますと…

① 募集する‼

(求人広告を出したり、人材紹介エージェントに求人の申し込みをしたり、ハローワークへ求人申込書を提出したりすることです。)

② 選考をする‼

(これは筆記試験をしたり、面接をしたりすることで、おなじみのステップだと思います。)

③ 採用を決める‼

(この人を採用したい‼と会社側が気持ちをかためるわけですが、ここはお見合いと同じで相手がOK‼と言ってくれませんと「採用は決まり‼」ません。)

④ 合意する‼

(会社側も働く人もOK‼となってはじめて契約成立‼です。何月何日から働き始めるかなどは、この段階では決まっているはずです。)

⑤ 初出勤‼

このようなステップを踏むわけですが、
③と④の間にあるのが「労働条件の通知」です。

会社側が選考に来た人に「このお給料で働いてもらえますか? この勤務時間で働いてもらえますか? この場所で働くのでいいですか?」と条件を伝えるのが「労働条件の通知」で、お見合いの「釣書」と同じで、必ず「書面」で手渡さなければならない決まりになっています。

ここで言う「決まり」は、実は法律で定められています。

使用者は、労働の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」(労基15条第1項)

「そんなものあったっけ?」

そのように思う方がたくさんいるかもしれませんが、実は「労働条件の通知」は法律で定められており、最近法改正されたようなものではなく、昭和22年(1947年)に制定された労働基準法に明記されている条文だということです。

かつては、労働者の募集にあたって、就労後の労働条件が示されず、あるいは事実に反する誇大な宣伝によって労働者を勧誘するとういような事例がまま見られた。」社会保険労務ハンドブック 平成29年度版 P42

ああ、やっぱりね‼

わたしも昭和の時代に初めて社会人になったときには労働条件の通知を受けた覚えがありません。しかも「書面」となるとまったく記憶がありません。

そこで、労基法は、そのような悪弊を排除し、かつ、労働力の売買を基本とする近代的な契約関係を確立するため、使用者にたいして、労働契約のさいに、賃金、労働時間その他の労働条件を明示すべき義務を課した。」社会保険労務ハンドブック 平成29年度版 P42

この「労働条件の明示」がいままで必ず「書面」(ペーパー)で手渡さなければならなかったものが「労働基準法に基づく省令を改正し」「電子メールなどでも可能にするように規制を緩和する。」ことになったというのが、この記事のニュースバリューです。

だた希望した労働者だけに限った措置で、労働者が電子メールなどでの受け取りを拒めばこれまで通り、書面で交付する必要がある。」同記事

このような懸念も書かれていますが、お給料の銀行振込だって本人が合意しなければ振込できない理屈になっていますが、実務上そのような懸念はほとんどなくなっています。これから採用される人は老いも若きもデジタルリテラシーが高まり、書面での交付はすっかり過去のものになってしまうかもしれません。

実務の運用手順を設計考案する上で、
会社としても社労士としても注目すべき記事だと思います。


2018年10月18日