[172] 人件費配分 下落続く 17年度統計 内部留保は過去最高(日経新聞)

財務省が三日発表した2017年度の法人企業統計では、企業が稼ぎを人件費に回す割合を示す「労働分配率」の下落が続いた。」H30.9.4火 中日新聞8面 経済

これすこし難しい記事だと思います。

そもそも「労働分配率」が何かとか、労働分配率が下落したらどうなるの?とかいうことがピン!と来ないからです。

労働分配率は好景気の時に下がり、不況時ほど上がりやすい。」同記事

これはとても大切なポイントです。

すこし解説をしておきたいと思います。

まず自分が会社を経営していると思ってください。

そしてあるときワンチャン!が訪れ… 自社商品が売れに売れ始めました。


浅野温子さん主演で千葉房総の缶詰工場の立て直しに奔走するドラマ「コーチ」みたいですね。

このドラマは90年代後半フジテレビで放映されたドラマで、その筋書きは会社の立て直しのために新商品の缶詰(サバカレー)を開発したが当初はまったく売れず、在庫の山ヤマヤマ!になり、資金も底を尽き、あきらめかけた時に一本の電話(ワンチャン!)をきっかけに爆発的に売れ始めるという予定調和だけどうっかり見てしまうドラマでした。

ちなみに主題歌は玉置浩二さんの「田園」でした。
(♪石コロけとばし…)

まあそんな感じでサバカレー缶の受注が相次いだら、どんどん生産して出荷をするわけですが、たいへん忙しくなるはずです。

売上はどんどん右肩上がりになっていきますが、たいへんいそがしくて「新しい人を雇おう!」とか「儲かったので給料をアップしよう!」と直ちに考えたり実行したりすることはあまりないと思います。

手伝ってもらうとしても、となりのあんちゃんとねぇーさんに頼み込んで手の空いた時間に来てもらうぐらいだと思います。

正式に人を雇い入れる実際の行動はひと段落落ち着いたころになることが多いということです。

ということは必死に生産出荷しているときには、売上高に占める人件費の割合はどんどん少なくなっていきます。人件費はさほど変わらないのに、売り上げが上昇するからです。(人件費 → ÷ 売上↑= 労働分配率 ↓)

これが「労働分配率は好景気の時に下が」るの意味です。

※労働分配率=人件費÷付加価値ですので、人件費÷売上で説明するのはすこしワイルドなのですが、労働分配率が下がるイメージをつかむためにあえてワイルドに算定しておきます‼

やがてサバカレー缶の出荷が一巡して、落ち着いてきたころに新しい仲間を雇入れたり、お給料をアップしたりするのだと思います。

売上があがったのですから楽勝ですよね!

しかし… やがて…

大手の水産会社がサバカレー缶に参入してきたらどうでしょうか?

売り上げが下がってくるかもしれません。

その時にただちに「仲間を解雇したり」いったん上がった「お給料を下げる」ことはなかなかできないと思います。

売上は下がるにもかかわらず、人件費は高止まりしたままというフェーズを迎えます。

これが「労働分配率は…不況時ほど上がりやすい。」の意味です。
(人件費 → ÷ 売上↓= 労働分配率 ↑)

※ちなみにイラストのひとは右肩上がりを万歳をしてよろこんでいるではなく、両手で必死に労働分配率の上昇を抑えようとしているようにみえないことはありません。イラストもそれぞれの手を必死で伸ばしているところは、すこし上昇が抑えられていますよね‼ (努力の結果が、みえましたか?努力の甲斐なく、労働分配率が上昇しているあたりが、とても気の毒です…)

人件費は採用難だとなかなか上昇しません。お給料を上げるといっても経営者は不況になったときを想像して大判振る舞いはなかなかできません。また解雇や雇止めには法律上の規制が固くかかっており、無理をすると訴訟や労働争議に発展するリスクを孕んでいます。

このように売り上げと人件費はリニアに呼応しない性質があるということをよく理解しておく必要があるのです。

その前提で労働分配率と内部留保率の記事を読むととてもよく理解がすすむと思います。

2018年09月20日