「給料日を待たずに、働いた分だけすぐに現金を受け取れる「給与前払いサービス」が急拡大している。」H30.9.5水 日経7面 金融経済
これは昭和の時代のドラマや映画では、サラリーマンが給料の前借を上司や社長に頼み込むシーンがあったように記憶していますが、実はそれとはすこし違うのです。
給与前払いサービスとは「給料日前に働いた分の給与をATMなどで引き出せるサービス」同記事 のことです。
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つまり昭和のサラリーマンが頼み込んでいたのは、まだ働いていないお給料を事前に払ってほしいと願い出ているのに対して「給与前払いサービス」は「働いた分」を給料日を待たずに支払ってくれるというものです。
もちろん昭和のサラリーマンだって、月の途中に頼み込むわけですから「前借」するマネーの中にはすでに働いた分が含まれているから貸してくれ!という意識があったと同時に、まだ働いていない分が混じっているかもしれないなという意識もあったはずです。
残念ながら昭和の時代には働いた分とまだ働いていない分を峻別することが事実上できなかったということです。理屈上はできるかもしれませんが、自己都合の社員のお願いに必要以上の事務コストをかけることができない!ということです。
「きらぼし銀行が手掛ける「前給」サービスは、企業から従業員の氏名や勤務データを預かり、支払い可能な給与額を自動で計算する。」同記事
昭和の時代には事実上不可能だった面倒な事務作業を、平成が終わろうとする時代にはシステムが軽々やってしまえるようになったということです。
「利用者にとっては余裕資金が乏しいときに突然の出費がかさんでも、前給が使えれば借金せずにお金を融通できる。」同記事
IT技術の進歩によって、確かに前給ができればお勤め人にとってはありがたい仕組みになるのだと思います。
いままでは金欠になったサラリーマンは、もしかするとカードローンや消費者金融でお金を借りてしのいでいたのかもしれませんが、あきらかに借金ですので、いつかは返さなければなりません。
それに対して前給は自分の働いた(過去形)のマネーなので、返す必要はありません。
ただし課題がないわけではありません。
「給与前払いサービスでは従業員が給料日前に現金を受け取れる代わりに一定の手数料を支払う。」同記事
「ええ… 手数料とられるのか…」
このように感じる人もいるかもしれませんが、前給をリクエストしたのは自分ですし、前給で恩恵を受けるのも自分ですので、この手数料は受益者負担として本人が支払うべきマネーだと思います。
但し…
「1回の手数料が定額ではなく、引き出し金額の数%を課すケースもあるようだ。」同記事
IT技術を使うのですから、引き出し金額に応じて手数料を計算するのは難しいことではないと思います。
注目すべきは「数%」の手数料というところです!
「例えば給料日10日前に現金を引き出した場合、6%のシステム利用料を利息とみなせば年利換算で219%。」H29.10.25水 日経新聞
すこし解説しますと10日間の利息が6%ということです。竹内力さんが萬田銀次郎として主演したVシネマ「難波金融列伝 ミナミの帝王」の利息は「トイチ」=10日間で利息が10%でしたので、6%はそれよりは安いということになりますが…比べる先が萬田金融とはいえ、6%が結構高い金利だということがおわかりいただけると思います。(闇金ウシジマくんの場合は「トゴ」=10日で50%ですので論外ですね‼)
この手数料を利息として計算すると1カ月の利息は約18%です。(6%×30日/10日)
年利息は219%‼です。(6%×365日/10日)
出資法の上限利息は年利20%ですので、法定の11倍程度の利息が課されたことになります‼
さらに利息制限法という法律で金額によっては18%とか、15%が上限になる場合もあります。
「給料から天引きする形で企業が清算するため、貸し倒れリスクも低い」同記事
このように高をくくっていたら…
前給を支給するときはノークレームで6%の手数料を従順に支払っていた従業員に限って退職した後になってから…
弁護士先生から出資法違反分の利息返還請求の内容証明付の書留のお手紙が届き「まとめて払え!」なんてことは会社としてはぜひ避けたいですね。
しかも賃金債権時効の2年前まで遡ってまとめて清算ということになれば、そこそこの金額になるかもしれません。
この前給制度どうやらもう少し研究をしておいた方がよさそうです。
つづく