「東京海上日動火災保険と人材サービスのネオキャリア(東京・新宿)は中小企業の従業員向けの保険商品やサービスを共同開発する。」H30.8.21火 日経7面(金融経済)
わたしは社労士ですので「中小」とみると「会社」「経営」「事業」などのキーワードをすぐに思い浮かべてしまうのですが、これは中小企業で働く「従業員」に向けた保険の新商品のお話です。
「従業員の勤務状況や給与、結婚・出産などのデータを踏まえ、適切なタイミングで割安な保険商品を提案。」同記事
わたしがかつて製造業の営業支店で勤務していた20代の頃には、お昼休みになると保険のレディが職場のデスク横まで入ってきて、課長と楽し気に談笑していたものでした。
「こいつ、新人や、独身やけど保険でもすすめたって!」
火のついたタバコを持つ手で課長がわたしのことを指して、このように関西弁で保険レディに紹介したあと、当時のわたしにとってはよくわからない保険の説明をしばし受けることになったことをよく覚えています。勉強不足だった自分がすこし悔しいですね。
その時に保険レディからボーナスのだいたいの額や彼女はいるのかとか、結婚はしないのかとか、両親はどこでなにをしているのかなど、根掘り葉掘り聞かれました。いまから考えるとかなりチャレンジャーな人だと思います。まだ個人情報保護法がなかった時代でしたので、このようなヒアリング営業が許されていたのかもしれません。
ちなみにわたしがこのヒアリングを受けていたのが昭和62年(1987年)。個人情報保護法の全面施行が平成17年4月1日(2005年)ですから、18年間はこのような光景が日本全国で繰り広げられていたということかもしれません…
この景色は今は昔の話で、現在では執務エリアと共有エリアはカウンターなどで仕切られ、個人情報保護法の施行にともない部外者は執務エリアにむやみに立ち入ることができなくなっています。
保険レディの目的は保険商品の営業ですから、この環境の変化は大きな打撃だったはずです。
保険レディが職場で販売していたのは、ほとんどが生命保険だったと思います。
もうひとつの保険のカテゴリーは損害保険ですが、損害保険というと身近なのは自動車保険です。これはいわゆる車屋さんで加入するか、車屋さんが紹介する損保代理店で加入することが多かったのではないでしょうか。すくなくとも私は保険レディから自動車保険を購入した覚えはありません。
ところがこの話も今は昔の話で、現在では損害保険も外資系をはじめとする商品を「ネット」で購入したり、「窓口」という名称のところに来店して複数の会社の商品を比較して購入することがどうやら主流になりつつあるようです。
つまり生命保険も損害保険も販売方法が法律の施行により様変わりしているということです。
「ネオキャリアは企業向けにクラウド上で人事や勤怠管理などを一元管理できるサービスを提供している。まずはこのシステムを10月に刷新し、簡単に保険に入れるようにする。」同記事
いままで保険レディがやっていたことのみならず、ネット保険や「窓口」保険販売がやっていることを、企業向けシステムにやってもらいます!ということです。
給料が上がれば「貯蓄型の保険はどうですか?」と言ってくる… 結婚すれば「もしも病気などで働けなくなった時のために所得補償型の保険はどうですか?」とか…
自動車購入目的で会社等でお金を借りれば「自動車保険をみなおしませんか?」と言ってくる… 住宅を購入すれば住宅所在地を照合して「火災保険には水災をつけていますか?」と聞いてくる…
出産すれば「お子様の将来のために学資保険はどうですか?」と言ってくる!ということです。
むむむむむ…
ネット上のリスティングやバナー広告が「うざい」と思われたり「軽い」と思われたりすることがありますが、それと同じようなことが起きないことを祈るばかりです…
わたしは社労士でFPですので、どちらかというと人間系を強みとする職業についています。実際に仕事でも知識や行動や柔軟性などを中心とする人間系がなければできない仕事がほとんどだと思います。
これからはこのようなシステム利用の仕組みが増えてくると思われますので、システム系を導入することにより「おすすめ」が軽く感じられたりするようなことが起きたならば、システムと人間系を橋渡しするようなお仕事で、ぜひご協力したいものです。
それともH.I.Sが経営する「変なホテル」のフロントにいるアンドロイドや恐竜などに呼び止められて、保険を進められるのでしょうか?
「ちょっとふくださん!」(アンドロイド)
ますます微妙な気分になりますよね。
「中小企業の従業員は大企業に比べ保険の加入率が低く、独自商品の提供で福利厚生制度の充実につなげる狙いもある。」同記事
保険レディが通っていたのは大企業にすぎず、中小企業はこのような仕組みを使って必要な保険を購入する機会を増やすのはむしろ有意義なことだと思います。