[155] みなし労働適用 無効 労基署、自販機大手を指導 (中日新聞)

飲料の自動販売機事業大手のジャパンビバレッジホールディングスが自販機の保守担当社員らに適用していた「事業場外みなし労働時間制」に関し、労働基準監督署が昨年末、東京都内の支店については無効だと指導していたことが二十八日、分かった。」H30.3.29木 中日32面

このような労基署の指導や書類送検の記事が掲載されることがあります。

社労士として活動していると労基署はどのぐらいの頻度で立ち入り調査をするのかということを経営者の方々から尋ねられることがあります。

「約4%です。」

このようにお答えしています。

その根拠はH30.1.10水の日経新聞に掲載されていたデータです。

監督指導の対象となる事業所は全国で約400万カ所。一方、監督官による立ち入り調査は16万9623件で、約4%

直近10年間でもっとも立ち入り調査実施率が低かった2009年で3.6%。もっとも高かった2010年の4.3%です。あとの年はおおむね4%前後で推移しているということです。

多くの経営者がおののいているのは税務署の調査ですが、この率(いわゆる「実調率」=国税庁の「税務行政の現状と課題」H29.3.14による)は、平成27年の法人企業で3.1%、個人事業主で1.1%ですから、税務調査よりも労基署による立ち入り調査の方が確率的な数字は高くなっています。(労基署の「実施率」と国税の「実調率」の分母分子は微妙にことなりますので、直読はできませんがおおむねの目安にはなると思います。)

この立ち入り検査の実施を担うのが「労働基準監督官」です。(社労士ではありません^^;)

2017年度の定員は約3000人で、各都道府県の労働局や労総基準監督署などに勤務している。」H30.1.10水 日経

一方、監督官による立ち入り検査は16年が16万9623件

これらを総合して計算するとあることがわかります。

労働基準監督官一人当たり年間56.5件の立ち入り検査を実施!

公務員が土日祝を休み、有給休暇をある程度消化している前提で年間235日(平成30年では年間245日[土日祝 三が日 大晦日控除済み]ー 夏休み3日ー有給休暇7日)稼働するとすると、4.2日に1回は立ち入り検査をしている計算になります。労基署長が自ら調査に出向くとは考えにくいので、実際にはさらに頻繁に担当者が会社に出向くことになっていると想像できます。つまり労働基準監督官は1週間に1回か2回は立ち入り検査をする!ということです。立ち入り検査はまあまあカロリーのかかる仕事だと思いますので、これ以上増える…つまり「実施率」が直ちに5%や6%に直ちに上昇していくということはあまり考えられないと思いますが、それなりに実直に調査はすすめられているということです。

立ち入り検査を実施した結果も記事になっています。愛知県についての記事ですが「県内の十四労基署は十七年に五千七百六十四事業所に立ち入り調査し、法令違反のあった四千十事業所に是正指導した。」H30.6.7木 中日新聞21面(愛知総合)

立ち入った事業所の約70%に是正指導したという結果です。(4,010÷5,764=69.569%)結構なヒット?率(取れ高?)です。

労働時間や休日に関する違反が最多で千七百二十九件あった。」同記事

これは是正指導の約4割にあたります。
(労基署の立ち入り検査が全体の4%、その中で是正指導されたのが70%、さらにその中で労働時間休日違反が4割ですから、労働時間休日違反を取られる会社は全体の1.12%ということになります。)
[4%×0.7×0.4=1.12%]

100社に1社は労働時間休日違反を取られているということです。

この労働時間休日違反は残業代未払いなど、マネーでの清算にかかわる案件が多いのが特徴です。

「残業代未払い」について、数字的に目安になるものがありましたのでご紹介しておきたいと思います。ニュースソースは昨年8月の記事です。

残業代未払い127億円 労基署指摘、昨年度27%増 H29.8.10木 日経新聞
「厚生労働省は9日、労働基準監督署の是正指導を受けて、2016年度に支払われた「未払い残業代」が127億円だったと発表した。」

割増賃金の支払いの平均額は1社あたり943万円で、従業員1人あたりでみると13万円だった。」同記事

この未払いを支払った943万円!は、決算の時には特別損失ということになりますから、是正指導をうけて過去2年分の未払い残業代を一時に支払うと…アッという間に本業の利益は吹き飛んでしまうことになります。利益率10%とすると943万円の利益をだすためには9,430万円!約1億円の売り上げを上げる必要があるということです…

賃金未払いの清算は当然現金ですから「キャッシュアウト!」するということです。確実に資金繰りは苦しくなり、持ちこたえられなければ倒産を考えなければならなくなります。

やはり日常での点検と対処が重要だということだと思います。

100社の中の1社になると思うかならないと高を括るかは、社長次第です…

2018年07月26日