[153] 最低賃金上げ 支援手厚く 時給30円上げ、助成倍増(日経新聞)

▶最低賃金 毎年10月をめどに見直す仕組みで、労使代表と有識者でつくる厚生労働省の中央最低賃金審議会で7月下中にも目安を示す。」H30.6.21木 日経新聞3面(総合2)

最低賃金の引き上げが行われると特に従業員が少ない中小企業では、人件費の上昇率が大きくなり、その分売り上げを伸ばすなどの企業成果が求められるということを先回解説しました。

今は平成30年の7月ですから10月の賃上げまで数カ月しかありません。その間に売り上げを上げる方法を考え出し、実行することによって成果を上げる必要があります。

マーケティングの教科書に書いてあるは売り上げを上げる方法は、たったの3つだと解説されています。


① 値上げをする。

② 顧客を増やす。

③ リピーターを増やす。


この3つのうち少なくともひとつを実行しなければならないということです。

中小企業では簡単に値上げをすることは一般的に難しいと思います。たとえ首尾よく値上げをしたとしても、顧客が離れてしまえば、顧客が減っることもあり「② 顧客を増やす」が逆効果となりますし「③ リピーターを増やす」にも影響しかねません。

「② 顧客を増やす」といっても直ちに増やすのはすこし無理筋です。しかも数カ月以内に新しいお客様で売り上げを約定するというのはとてもハードルが高いと思います。

「③ リピーターを増やす」とは買ってもらえる回数を増やすことですが、同じものを都合よくたくさん買ってくれることはめったにありません。お客様にも都合があるのですから、当たり前です。

この第三のポイントは、ふつう新しい製品などを発売して買いたい意欲をそそりお得意様にお買い上げいただくのが王道です。つまり新製品開発が必要です。これも時間がかかる話です!ものの数カ月でできる相談ではありません。

なんとか時間稼ぎをする方法はないものか…

やれることはいくつか思いつきますが、わたしは社労士ですので人事系の助成金をこれらの「時間稼ぎ」に上手に使うという方法をご紹介したいと思います。

たとえば「キャリアアップ助成金」という助成金を活用する方法があります。
これは現在半年契約や一年契約で働いている人たち、ひらたく言うとパートの人たちを定年まで働けるようにすると、一人当たり285,000円支給されるという制度です。

一足飛びに正社員にしてしまえば、一人当たり570,000円が支給されます。

パートをいきなり正社員!というのは多くの会社でも、またパート本人にも扶養者控除などの税制面でも抵抗があると思いますので、ここでは仮に最低賃金で働いているパートを契約更改のない無期社員にする施策を検討しましょう。

実はこの助成金は単純にパートを無期社員にしただけでは助成金は支給されません。無期社員に転換するとともに、基本給を5%あらかじめ引き上げる必要があります。基本給を5%あらかじめ引き上げるのですから、最低賃金が20円程度引き上げられたとしても余裕でクリアーできそうです。

その原資をこの助成金でチャージしよう!という作戦なのですが、どのぐらい効き目があるかすこし具体的に見ていきましょう。

例えば時給1,000円のパートさんを有期契約から無期契約にした場合、基本給5%アップですから時給1,050円以上にする必要があります。時給の差は50円です。285,000円の助成金は5700時間分に相当します。週29時間働いているとするとおおむね月116時間ですから、約49カ月分があらかじめ助成されると考えることができます。

すこし残業があったとして辛めに算定して…

約48か月分(4年分)のリードタイムを稼ぐことができます。

時給1000円で計算しましたが、時給が1000円を下回る会社ではこのリードタイムはさらに伸びることになります。

現在愛知県の最低賃金は871円です。ここから5%賃上げをすると915円です。その差は44円ですから。285,000円の助成金は、6,477時間に相当します。これは約56カ月分に相当します。約4年半ですね。


このリードタイムの間に「② 顧客を増やす」手立てを整え「③リピーターを増やす」ための新製品の開発をするのです。首尾よくいけば、新製品は現行品よりも高い単価で販売できるかもしれません。そうすると「① 値上げをする」が無理なくできることになります。

この①②③がそれぞれ26%ずつ増加したとすると、ウソみたいに聞こえますが、売り上げは倍以上になります。(1.26×1.26×1.26=2.000376)

ここにご紹介したのは、マーケティングの教科書に書いてあることと、現行の助成金の活用方法の一例を組み合わせだけですが、首尾よくいけば大きな成果を生む可能性があります。

最低賃金の上昇は確かにリスクですが、巧みに波をとらえてキャッチザウェーブすることもできるということです。

そのためには自社の働き方と助成金を立体的に結び付けて考える力がどうしても必要になるのです。



2018年07月19日|ブログのカテゴリー:生産性向上