前回「早期退職」や「希望退職」の募集記事が人手不足の記事などに埋もれがちながら掲載されていることをご紹介しました。
そのなかに超大手企業の「NEC 国内3000人削減」という記事が1月末に掲載されたこともお伝えしました。
実はNECとともに大手企業が早期退職施策に取り組んでいる記事が、昨年春からコンスタントに新聞で伝えられていました。その大手企業とは三越伊勢丹です。
・三越伊勢丹が希望退職検討 H29.5.11木 中日新聞
「業績低迷が続く百貨店大手の三越伊勢丹ホールディングス(HD)は十日、人件費の削減に向けた希望退職を検討すると発表した。」
・早期退職金を増額 三越伊勢丹 最大2倍、対象者拡大 H29.10.21土 日経新聞
「早期退職者に支払う退職金を増額する。現行で50歳以上となっている部長職の早期退職の対象を48歳に引き下げ、40~50代の課長職は退職金の割増額を最大2倍に引き上げる方針。」
・三越伊勢丹、47%減益 今期最終 早期退職金増え特損 H30.2.1木 日経新聞23面
「今年度は早期退職制度に173人が応募。昨年12月に関連の特別損失は約43憶円と発表していた。」
・退職金上乗せ 地方でも 三越伊勢丹HD、早期退職で H30.5.24木 日経新聞14面
「3年間で従業員の2割に相当する800~1200人の退職を見込む。ただ18年3月期は約170人の応募にとどまった。」
これら一連の記事を見ると早期退職を昨年春に計画して、労働組合との話し合いを経て早期退職金を増額して、いざ!実施をしてみたら173人が応募に応じてきたが、目論見ほど喰いつきはよろしくなく、計画を達成するために対象を地方にも拡大したという姿が見て取れます。
わたしはもとは言えば企業の人事部出身ですので伊勢丹人事担当者は相当苦労しているだろうなと察しがつきます。人事部の仕事は、社員と経営陣の間をつなぐなかなかハードな仕事ということがこの記事からわかるからです。
人事部というところは伏魔殿のようなイメージをおおくの社員がどうやらすくなからず持っているようですが、実は社員の立場と経営の血が半身ずつ入っているキカイダーのような姿が人事部なのです。すこし不完全なつくりがキカイダーと人事部に共通する特徴なのです!(「完全」に社員の立場になれば、それはもはや「労働組合」ですし、「完全」に経営の立場になれば、それはもはや人事部ではなく「経営企画部」です。)
石ノ森章太郎先生の作品「人造人間キカイダー」では、キカイダーの青い体の半分が正義の心を表し、赤い体の半分が悪の心を象徴しているそうです。キカイダーのベルトのダイヤルはキカイダーの精神状態を反映して、自動的に回転するのですが、青色が上向きになっているときは正義の心が悪の心に打ち勝っていることを表しています。そのダイヤルがときどき悪の方向に傾いた時には、それを押し戻す「良心回路」と呼ばれる仕組みがキカイダーを製作した光明寺博士によってもともとセットされているのですが、なんと!その「良心回路」までもが不完全であり、単純な善悪は判断できるが複雑な善悪のジャッジに迷いが出てしまう!その不完全な「良心回路」が働くがゆえに、正義と悪の相克に苦しむ姿は、キカイダーのテーマそのものであると同時に、実に!人事部あるあるなのです。
同じく「人造人間キカイダー」の登場ロボットで「ハカイダー」というわるーい(悪に一途な)キャラがいるのですが、正義と悪の相克に悩む人事部の姿をあざ笑い、経営の御旗の威を借りて血も通わぬ数字を示してくる「ハカイダー」そのもののような経営企画部というところは、個人的には大嫌いな部門でした!
ほんまに! 自分の良心に従って考えて血の通った仕事をしてみろ!ってね… 外形的に思考停止して立場だけで物事を語る姿はまさにダーク(悪の組織)のロボットやんか!ってな感じでした…
またまた閑話休題ですね…w
さてこの三越伊勢丹ですが、この記事からだけでもたくさんのことを読み取ることができます。
まず早期退職に上積みした金額は記事情報だけで算出できます。
43億円÷173人≒2,486万円/人(平均)
三越伊勢丹が実際どうなっているかわたしにはわかりませんが「40~50代の課長職」ですでに退職金が2,400万円程度ある人はそんなにいないと思われますので「最大2倍」に引き上げても上積みの平均である2,486万円に届いて合計4,972万円の退職金をもらう人はそんなに多くはないということになります。
そう考えると応募の中心は50代の部長職かな?と推理がすすんでいきます。
3,000万円から4,000万円の退職金では40歳代の課長職は転職に踏み切らず、5,000万円以上の退職金を積んでも50代の部長職は退職に応じないという姿をこの記事から読み取ることができます。
40代は子どもがいれば教育費がかかり住宅ローンがある。
50代はあとすこし頑張れば定年が見えてきている。
「なんでオレが応募せなあかんねや?」
そういうことだと思います。中堅社員あるあるですね。応募が渋いのもやむをえないと思います。
それがマジョリティの意見とは思いますが、その意見を覆して173人の方々が退職に応じたと読むこともできます。わたしが勤めていた業種は三越伊勢丹とは同じではありませんが、わたしは52歳で退職しましたので早期退職組という点では、三越伊勢丹ご退職の173人の方々とどこか相通じるところがあるかもしれません。機会があれば、新宿の思い出横丁あたりでウーロンハイと煮込みなどをいただきながら、せまーい屋台で外国人に囲まれながらお話をしてみたいものです。もちろん!三越伊勢丹の人事部の方とも機会があればお話をしてみたいものです。
人造人間キカイダーナレーション「プロフェッサー・ギルの吹き鳴らす悪魔の笛が、ジローの体に激痛を与えた。ジローの体に組み込まれた不完全な良心回路がギリギリの抵抗を試みる。この笛に負けた時、ジローはダークの手先になってしまうのだ!」
ガッツだぜ!三越伊勢丹!
わたしも頑張りたいと思います!