先回H30.5.1より確定拠出年金の法律が改正になり、自分の貯めたお金を預けている金融機関(例えば銀行など)から自分のお金の運用方法の提案を受けるのですが、その提案が法改正前は「元本確保」商品を金融機関側からは、必ずおすすめしなければならなかったのが、5月からは別に「元本確保」に拘らなくてもよくなったのだ!という解説をしました。
では具体的はどのように変わっていっているのでしょうか。日経新聞に詳しい記事が載っていましたので、チェックしてみましょう。
「さわかみ投信は日本株投信の「さわかみファンド」を初期設定商品に選択した。」H30.6.13木 日経新聞7面(金融経済)
「損保ジャパン日本興亜DC証券は契約企業に初期設定商品をバランス型投信にするよう推奨。」同記事
「第一生命保険は契約企業に… 適切な初期設定商品を提案している。」同記事
注目すべきは「初期設定商品」という言葉です。
「初期設定商品とは、加入後に運用商品を決めない加入者の資金を自動的に振り向ける先。」同記事
つまり自分の貯めたお金を預けている金融機関(厳密には資産を預け入れているところと運営管理をしているところは別会社の場合もあります。)から「どれで運用しますか?」とおすすめの商品を提案されるのですが、決めかねていると、とりあえず!「初期設定商品」にセットしておきますね!という流れになっているということです。
そしてこの「初期設定商品」の具体的な商品は「定期預金といった元本保証・確保型商品にする金融機関がほどんどだった」が「長期の資産形成で老後に備えるDCの目的を考えれば、投信が適当だと判断が主流になりつつある。」同記事 ということみたいです。
なんにも言わないと元本割れする可能性のある商品を自分のお金で買われてしまう!ということですが、損ばかりではなく、知らないうちに儲かった!ということもあるということです。
前述の損保ジャパン日本興亜DC証券では「昨年から契約先への説明を始め、対象プラン701社のうち、すでに23%の161社がターゲットイヤー型などの投信を採用した。」同記事 としています。
またあらたな「ターゲットイヤー型」という言葉が出てきました。先ほど「初期設定商品」つまりなにも主張しないと元本割れするかもしれない(知らない間に儲かるかもしれない)商品にセットすることをデフォルトとする金融機関がこれからは増えてくるだろうと書きましたが、若い人もシニアも同じようなリスクを背負うのはすこし無理があるので、若い人はハイリスクハイリターン型をシニアはローリスク型をセットするのが妥当だ!という考えのもと、年齢層によって「初期設定商品」の詰め合わせを変えるのが「ターゲットイヤー型」という商品です。
若いころから自分のお金をコツコツ蓄えるわけですから、若いころは元本は少なくシニアになるほど多いわけです。したがって、たとえば同じ率で値下がりすれば、シニアの方に当然ダメージが大きくなります。これを回避してダメージ的に公平にしようとしているのが「ターゲットイヤー型」と思っていいと思います。
確定拠出年金の先進国のアメリカでは、確定拠出年金自体が「ターゲットイヤー型投信を初期設定商品にしやすくしたことで広がり、2017年末時点で資産残高は約580兆円に上る。その7割近くが投信で運用されている。」同記事
「日本はDCの運用資産の6割近くが元本確保商品。」同記事
アメリカとは年金制度も雇用制度も不動産事情も異なりますので、確定拠出年金の数字だけを比較して語るのはあまり意味がないと思いますが、積極的に自分のお金を増やす選択肢が整備されてきたということです。
個人も会社も投資よりお金を増やすことや確定拠出年金の導入を検討せずにスルー!するのはすこしもったいないと思います。退職金は中退共だけ…という会社は数多くあると思います。中退共があるだけまし…という理屈もありますが、退職金について個人年金と横断的に考え、会社の身の丈にあった効果的な制度を見つけて行く会社には採用すべき人材が集まる可能性が高まり、経営のレベルも向上することになるのだと思います。
この度の確定拠出年金の法改正は、初期設定商品のみならず「中小企業掛金納付制度」や「簡易企業型年金」など中小企業への確定拠出年金導入を前提とした改正事項も織り込まれていることも注目すべきポイントです。