[141] 最高裁判決(各新聞社の反応)「長澤運輸訴訟」「ハマキョウレックス訴訟」

先日6/1の二つの最高裁判決には明暗があった。労働者側からの視点では「長澤運輸訴訟」では再雇用格差が容認され「憤り」が、「ハマキョウレックス訴訟」では一部手当の支給拡大が認められ「喜び」がという解説をしました。

これら二つの結論に対して、新聞各社の反応もそれぞれでとても興味深いものでした。
新聞各社の第1面の見出しを比較してみましょう。


・再雇用 格差を容認 最高裁初判断 H30.6.2土 日経新聞1面

・定年再雇用 賃下げ容認 最高裁 同一労働で初判断 H30.6.2土 中日新聞1面

・最高裁「不合理な格差」認定 非正社員の手当 初判断 H30.6.2土 朝日新聞1面

・非正規賃金格差一部違法 最高裁初判断「項目ごとに考慮」H30.6.2土 読売新聞1面

・賃金格差 項目別に判断 非正規待遇 合理性促す 最高裁 H30.6.2土 毎日新聞1面


全国紙一面の見出しですので、それぞれの新聞社がどこに着眼しているかという読み方ができると思います。

日経と中日は「長澤運輸訴訟」つまり再雇用後のお給料が下がることの是非を1面見出しにしました。

それに対して、

朝日と読売は「ハマキョウレックス訴訟」つまり正規非正規問題を1面見出しにしました。


毎日はやや「ハマキョウレックス訴訟」寄りのようにも読めますが、ふたつの訴訟に共通する法則である「不合理か否かの判断は賃金総額の比較のみではなく、賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきだ」H30.6.2土 毎日という点に着目しているように見えます。

各社で評価や見解が異なっているのが、一面の見出しに表れているように思えます。

日経と中日はともに定年後再雇用にスポットをあてたわけですが、日経が「格差を容認」としているのに対して、中日が「賃下げを容認」としているところが気になります。

「格差」という言葉は差がもともとあったというニュアンスがありますが「賃下げ」となると誰かかが意図的に「賃下げ」する必要があり、そのような意図を含んだ言葉を中日は選んでいると読むべきでしょう。

この点について中日の社説に新聞社としての考えが見える箇所があるように思え、すこし引用しておきます。

・中日新聞(社説)
“ただ判決には疑問も覚える。運転手がハンドルを握る時間が同じなら、やはり「同一労働同一賃金」という物差しを当てるべきではないのか。”

これは最高裁判決への批判のように読めないこともありません。新聞社としてのスタンスがあり「賃下げ」の文字に込めた意図があると感じずにはいられません。

このような評価や見解は新聞社ごとにあって当然なのですが、普通は気に入った新聞をせいぜい1紙読むことが多いと思われ、うっかりとある新聞社見解をうのみにしてしまうこともあり注意が必要です。

そのほかの新聞社の社説もご紹介しておきたいと思います。それぞれ社説の第一文に各社の考えが込められているようにも思えます。第一文目を比較してみましょう。


・朝日(社説)
“正社員かそうでないかによって、賃金に不合理な格差を設けることは許されない。最高裁がそんな判決を言い渡した。”

・読売(社説)
“不合理な賃金格差の解消を求めつつ、企業側の経営判断を尊重した判決だと言えよう。”

・毎日(社説)
“働き方が変化し、「同一労働同一賃金」が重視されつつある社会の状況に対応した判断と言えよう。”

ちなみに…

日経新聞は本判決に関して社説では無視されていました!'o'
この日の社説の見出しには最高裁判決の姿形はなく…アメリカと参院があるのみでした…
「米国は鉄とアルミの高関税を撤回せよ」「参院の定数増は容認できない」

これはこれで新聞社としての考えだということです。
面白いですね。(いとおかしけれ)

2018年06月07日|ブログのカテゴリー:判決