[140] 最高裁判決記事は明暗!「長澤運輸訴訟」「ハマキョウレックス訴訟」

予定通り6月1日(金)に同一労働同一賃金をめぐる最高裁判決がでました。

「長澤運輸訴訟」では定年後も同じ仕事をしているのに給料がさがるのはおかしい!というのが訴えのポイントで、一方「ハマキョウレックス訴訟」では正社員と契約社員は同じ仕事をしているのに手当てが違うのはおかしい!というのが訴えのポイントでした。

判決については、みなさん新聞やネットやテレビなどですでにご存じとは思いますので、長澤運輸訴訟とハマキョウレックス訴訟では、すこし明暗をわけたような印象だった新聞記事の書きっぷり!に注目したいと思います。

この度は特別に!いつもの日経 中日に加えて!朝日 読売 毎日もチェックしてみました!

長澤運輸訴訟では、むずかしい部分を割愛してすこし平たく言うと「定年後再雇用で仕事の内容がかわらなくても、給与や手当の一部、賞与を支給しないのは不合理でないと判断した。」H30.6.2土 日経1面という結論になりました。

これでもむずかしいですね… 誤解をおそれずにもっと平たく言うと、定年後にお給料が下がるのはまあやむをえないでしょう!ということです。(でもちゃんと話し合って下がる理由をはっきりさせておけよ!とくぎもさされていますが、ダメではないというところが大ポイントです!)

それに対して「ハマキョウレックス訴訟」では「個別項目ごとに不合理性を検討し、一部の手当てを契約社員にだけ支給しないのは違法と判断した。」H30.6.2.土 中日1面 という結論でした。

こちらも誤解をおそれずに言うと、正社員も契約も同じように手当は支給しなさい!ただし!なかには正社員だけの手当てがあってもやむをえないね!という感じでしょうか。

朝日新聞の社会面では「待遇者訴訟 喜びと憤り」という見出しになっています。もちろん「憤り」「長澤運輸訴訟」の判決の判決を指しますし、「喜び」「ハマキョウレックス訴訟」を指します。訴えた側に立った見出しになっているということに注意です!

さらに同じ朝日新聞社会面の「長澤運輸訴訟」の見出しは“「再雇用賃下げ容認、不当だ」”となっているのに対して、「ハマキョウレックス訴訟」の見出しは“一部手当の支給拡大「前進」”という見出しになっています。

さらに…

「長沢運輸訴訟」の写真は判決のもの、「ハマキョウレックス訴訟」の写真は判決のものがつかわれていました。

「長澤運輸訴訟」の写真には同じ仕事なら 同じ賃金で働きたい 定年後賃下げは「社会的に容認」されていないという横断幕を5人の男性が掲げているものだったのに対して、「ハマキョウレックス訴訟」の写真は格差からの解放へ」と書かれた通称ハタ(縦書きのびろーんとした紙のこと)を男性が縦に広げ、女性が格差是正判決と書かれたびろーんを持っている写真が掲載されていました。

これはあくまでも「訴えた側」からの評価ですから、いわゆる「会社側」から見ると明暗は逆になるはずです。

会社の視点から見た「長沢運輸訴訟」の最高裁判決は、定年後再雇用では「格差を容認」された。つまり定年後に賃金をさげることができるのだな!と会社が考えても無理はない判決だったということです。

それに対して「ハマキョウレックス訴訟」の最高裁判決は「非正規賃金格差 一部違法」ですから、会社にとってみれば、これからは正社員と契約社員の手当の支給は慎重にしなければならなくなる…という判決だったということです。

とくに「精勤手当」や「皆勤手当」は、額はともかく同じように支給すること!という結論になっていますので、注意が必要です。「精勤手当」や「皆勤手当」は正社員だけに支給している会社は思いのほか多いと思います。そのまま放置していると、訴訟リスクが高まるということになると思います。ひとたび訴訟になると、この最高裁判決の判例をテコにされることは間違いありませんので、会社にとっては勝ち目がありませんね…

訴えられた時点で勝敗が決まっているようなものですから、訴え得?ですよね。

「賭博黙示録カイジ」という漫画で、サイコロの目がすべてピン(1)のものを使って、ちんちろりんをして、相手を追い詰めるシーンがありましたが、これからの裁判はカイジみたく…「また!ピンゾロ!」「そして!また!ピンゾロ!」「当然!ピ・ン・ゾ・ロ!」みたいなことになるのかもしれません。

いずれにしても「錦の御旗」をテコにするわけですから、会社にとっては訴えられやすくなることは間違いないと思います。

訴えられる前に手当をしておくことが最善の策だと思います。


余談ですが…この日(6/2)はこの二つの最高裁判決がでかでか!掲載されていましたので、国民栄誉賞授与決定の羽生結弦さんの扱いが小さく見えて、すこし気の毒な気持ちになりました。わたしは特にファンというわけではありませんが、国民栄誉賞に値するすばらしい実績を残された方なので、もっと別のタイミングがあってもよかったような気持になりました。7月2日の表彰式の記事に期待したいと思います。羽生さんおめでとうございます。

2018年06月05日|ブログのカテゴリー:判決