[120] トヨタ平均昇給3.3% 事実上決着 ベア額非公開 1300円超(中日新聞)

ことしの春季賃金交渉(春闘)の一斉回答日が3月14日にありました。

ここに来て…ですが、この一斉回答日にたどり着くまで、どんな風に交渉していくのでしょうか?

この春季労使交渉のやり方について、H30.3.15木の日経新聞3面の「きょうのことば」に端的にまとめてありましたので引用しておきましょう。

1955年に8つの産業別労組が一緒になって賃金闘争を開始したのが、春季労使交渉のはじまりとされる。交渉を引っ張る「パターンセッター」と呼ばれる先導役が賃上げの回答を引き出し、それを波及させるという方式が従来は一般的だった。先導役は鉄鋼から自動車に移ったといわれる。」H30.3.15木 日経

この歴史的な方式が「崩れた!」という事実が、今年の春闘のおおきなポイントになると思います。

「先導役は…自動車」つまり事実上トヨタ自動車の交渉が先導役ということです。

「先導役」とは「パターンセッター」であり「交渉を引っ張る」そして「それを波及させる」という役目を担っていた(過去形)ということです。

つまりトヨタ自動車の賃上げ回答をテコに、周辺の労組は交渉をクロージングさせるという方式だったということです。

それが今年はトヨタ自動車がベア額を非公開とした…

トヨタ自動車のベア額をパターンセッターとできなくなったということです!

02年にベアの金額を明示する現在の要求方式になって以降、ベア水準を非公表としたのは初めて。」H30.3.14水 中日

トヨタの水準が決まってからグループ各社が追従してきたが、各社の経営課題に応じた労使議論への転換を促す。」同記事

地味に見えますが、結構重く響くかじ取りがなされたのだと思います。

春季労使交渉(春闘)のそもそものフレームが変わるということですから…

この背景には、トヨタ自動車の賃金水準がすでに高いレベルにあることと、グループ会社との賃金格差を「トヨタ超え」によって縮小したいという意図があるということです。

ベア非公開について「『トヨタマイナスアルファ』からの脱却を理由に掲げた。同社(トヨタ自動車)の正社員組合員の平均年収は770万円。すでに日本の給与所得者の平均(422万円)を大きく上回る水準だ。グループの中小企業との格差が大きい点を課題とみている。トヨタで決着したベア水準を手掛かりに、グループ会社がそれより低めに設定する慣行をやめる意味合いがある。」H30.3.15木 日経

「トヨタマイナスアルファ」つまりトヨタの賃金水準を超えてはならぬという不文律は、昨年の春闘で「トヨタ超え」として破られました。これを積極的に継続させたいトヨタ自動車の意向と考えることができると思います。

いままでは「峰高ければ、裾広し」という感じで、峰のトヨタ自動車にどこまでも高く天を目指してもらい、その賃金水準がグループ会社の賃金を引き上げていた時代から、トヨタ自動車の賃金水準を目指して肩並べる水準まで自力で上がってゆく時代に変化した…そういうメッセージと読むこともできると思います。

とはいえ…

トヨタ自動車の回答は11,700円(全組合員)昇給+ボーナス6.6カ月満額回答(正社員)で、かなり高水準です。

この高水準の意図は、これも今年初めて動画でメディアに公開された労使交渉の様子ににじみ出ているような印象を持ちました。単純に利益が出ているから賃上げをするというものでは、もはやなくなってきているということです。出た利益を配分するという発想から、利益を出るようにするために先払いするというパラダイムチェンジがどうやら進んでいるようです。

次回はそのあたりを解説してみたいと思います。

2018年03月22日