前回は毎月勤労統計(マイキン)では、単純に「名目賃金-物価上昇率=実質賃金」と考えない方がいいということを申し上げました。
その理由なのですが…
実はマイキンは「額」を比較する統計ではなく、変化「率」を比較する統計だからです。
確かに2月23日(金)の日経新聞の記事にも「17年の現金給与総額(月平均)は31万6966円だった。」と書かれていますが、
マイキンの場合はそこよりも「名目賃金にあたる同年の現金給与総額は0.4%増と、4年連続で増えた。」こちらの増加率の方に注目していただきたいわけです。
ここで「名目賃金にあたる…現金給与総額」とはどういう意味でしょうか?
名目賃金と現金給与総額が同じような書きっぷりが、気になります。
図にまとめてみましたので、これを見ながら理解してみてください。
下段の左ですが、
一人一人が受け取る給与を(統計的に)全部合計したものが「現金給与総額」だいうことです。
そしてそれを一人当たりに書き戻す… つまり平均化したものが「名目賃金」(額)だということです。(下段右側)
平均化する理屈はわかりますが、すこし乱暴な感じがします。
働いている人、雇用者の中には、当然正社員もいれば、非正規もいる、パートもいれば、アルバイトもいる、また取締役などの役員も含まれているわけですから、それらを一人は一人だろ!と割り算してしまうのは、すこしワイルドすぎると思います。
でも!それでいいのです!
なぜなら、マイキンは一人一人のミクロの給与額のことではなく、日本経済におけるマクロ的な視点で雇用者に支給される給与額がどうなっているのかという点が、関心のポイントだからです。
ここのところをはき違えずに、記事を読んでいないと、せっかくのこの記事の意味を理解することができません。
「賃上昇上昇っていうけど!オレの給料あがってないぜ!」とぐだをまく新橋サラリーマンになってしまいます。
ご自身のお給料と、新聞でいう「賃金」はすこーし違うということを理解する必要があります。
ご自身のお給料は、個人単体のものですから、ベースアップや定期昇給があるとたしかに上昇するのですが、
それだけがファクターではありません。
ご自身の人事考課とか、年齢による役職定年とか、単身赴任が解消され手当てが減った。
また手取りで行くと階段状になった税率や社会保険料により、決まり方はより複雑です。
収入はあがっているはずなのに、所得はあがらないというのはよくあるはなしです。
新聞記事になっている毎月勤労統計(マイキン)が指し示しているのは、個人のことつまりミクロのことではなく、日本経済のなかのマネーの動きの一つである給与がどのように変化しているかというマクロ的な視点を語っているのだいうことに留意が必要だということです。
給与マネーが膨らんでいるのか、しぼんでいるのか…
これはまさに変化「率」でございます…