[220] 自営業 進む高齢化 65歳以上39.8% 定年後、起業も

 

国内で自営業者の高齢化がすすんでいる。」H31.2.26火 日経夕刊1面

「高齢化」という言葉をみると、ついネガティブな気持ちになるクセがついているのですが、この記事はそのようなトーンのものではありません。

総務省の労働力調査によると年齢別で増加が目立つのは65歳以上で … 定年退職後に事業を起こす人が出ていることも背景にある。」同記事

18年の自営業者数は全体で535万人だった。前年に比べて7万人増え、約40年ぶりに2年連続で前年を上回った。」同記事

高齢化が進行することにより、65歳以上の人口がムクムクと増加していますので「独立開業しよう!」と決断する人の割合に変化がないとしても、65歳以上の人口の母数が増加した分自営業者の数が増えるのは道理ということになります。

次に考えるべきは自営業の質の問題です。

開業するのは志があれば誰にでもできますが、継続するにはそれなりの努力が必要です。

イラストのようなシャッター街になったのでは意味がありません‼


さらに『自らのスキルを生かして新たに自営業を営む高齢者も増えている可能性がある』(みずほ総合研究所の宮嶋貴之氏)。」同記事

法律事務所や税理士事務所、学習塾などを営むケースがあるようだ。」同記事

わたしも社労士事務所を経営している自営業者の一人ですが「自らのスキルを生かして新たに自営業を営む」ためにはそれなりの準備が必要です。

わたしは社会保険労務士と一級ファイナンシャル・プランナー技能士の資格をテコに開業しましたし、開業には、それなりの資金も準備する必要があります。

ここで言う「法律事務所」がどのような事務所を想定しているかはわかりませんが、弁護士事務所であれば、すくなくとも司法試験に合格していることが必要条件ですし、弁護士登録をしてから一定のキャリアを積む必要あると思います。

税理士試験に合格したからといって直ちに開業はできません。2年間の実務経験が必要になりますので、おおくの税理士先生はどこかの税理士事務所に2年間「お勤め」をしてから、独立開業していらっしゃいます。

社労士も登録するためには実務経験が2年以上必要ですが、わたしの場合は勤め人のときに人事部で働いていた経験が首尾よく実務経験と認められました。

しかし、誰しも私のような実務経験があるとは限りませんので、たとえば営業一筋でお勤めをしていたようなひとは、どこかの会社や社労士事務所で経験を積むか、社労士試験に合格したのちに事務指定講習というのを受講しなければなりません。

実際に士業をやってわかることですが、経験がものをいう場面が思いのほかたくさんあります。

実務経験がなく開業した場合は、それなりに苦労があると思います…

かたやサラリーマンの世界は、60歳定年まで勤め上げたのち、今や多くの場合65歳まで嘱託などの形で契約社員として働ける道筋が、法律的にも実務的にもできあがっています。

65歳まで会社勤めをして、それから首尾よく資格試験に合格して、事務所を開業する。

事務所を開業しただけでは仕事はありませんので、お客様を見つけるために営業をする必要があります。それにはそれなりのエネルギーを必要とします。

わたしは現在55歳です。10年後にその「それなりのエネルギー」が自分の中にあるかどうか…

すこし自信がありません。

さらに年金は65歳から支給されますので、ひとたび年金支給開始となれば、年金を頼りにする気持ちが生まれれば、営業の努力をする気がうせてしまい、せっかく開業した事務所が開店休業に陥ることもあるかもしれません。

つまり…

自営業の質をもとめるならば、定年や65歳よりもうすこし早くから準備をする必要があるということです‼

45~54歳の年齢層でも自営業者が増え、18年は3%増の102万人。『人生100年時代』の到来を見据え、早めに自営業に転換する人もいるよう。」同記事

わたしが社労士事務所を開業して日々日々感じているような「早めに動くべし」の流れが、すでにはじまっているようです。

統計の数字にもそれが表れてきているようです。

英文学者の外山滋比古先生は著書の「50代から始める知的生活術(大和書房)」の中でこのようにのべています。

「人生の二毛作を志すなら、四十代から準備を進めておくことです。…… 第二の人生が定年後に始まるとして、超高齢社会になった現在では、まだ三十年も、場合によっては四十年もセカンド・ステージが待っているのです。その長期戦に備えるためには、早くから、二度目の作付つけの準備をしておかなければなりません。自分の畑にどの作物が合うのか。最初は試行錯誤も必要でしょう。それを始めるのが四十代というわけです。」


「人生の二毛作」… いい響きだと思います。


2019年03月14日