「長野県飯田市のしらびそ高原にある宿泊施設・レストラン『ハイランドしらびそ』で、違法な時間外労働（残業）と残業代の未払いがあったとして、施設を運営する上村振興公社（同市）が、飯田労働基準監督署から、労働基準法違反で是正勧告を受けていたことが分かった。」H30.9.29土 中日新聞29面 社会

この記事はよくあると言ってしまえば「ハイランドしらびそ」の従業員の方々が気の毒に思いますが、新聞を毎日チェックしていると、残念ながら…よくみかけてしまう記事です。

しかし‼わたしは‼

「ハイランドしらびそ」の立地条件に大変興味をそそられました。

「ハイランドしらびそは、標高千九百メートルの高原にあり、南アルプスの景観や星空が売り。」同記事

わたしは「ハイランドしらびそ」があるしらびそ高原の展望台までバイク行ったことがあります。写真はその時に撮ったものです。

わたしが訪れたのは5月のゴールデンウィークでしたが、展望台からは残雪の残る南アルプスが一望でき、神々しい山々の姿にしみじみした記憶があります。

実はここまで行くのは、すこし苦労がともないます。その分展望が素晴らしく苦労が報われたような気分になりました。

わたしはツーリング気分でしたので、名古屋から豊田市を抜けて設楽町、豊根村、売木村、天龍村という里山を次々と抜けて152号線に至りましたが、しらびそ高原を訪れる多くの人は飯田市を経由すると思います。

わたしの選択したルートに比べるとたいへん近道ではありますが、それでも1000ｍ級の山越えをする必要があります。

そしてさらに国道152号線に至るとすぐに左折‼してしらびそ高原にいたる山道に入ります。ひたすら1～1.5車線の山道を登り続けて、ようやくハイランドしらびそのある展望台（写真撮影地）に到着することになります。

気づいた時には、空気がひんやりとしています。それだけ高度があがっているということです。

わたしが興味をもったのは、この「ハイランドしらびそ」は閉鎖環境かそれに近い職場だったのではないかという点です。

通勤するとして、車での往復はわたしがバイクで昇ってきた道しかなく、首尾よく麓に自宅があったとしても、ずいぶん時間がかかるのではないかと思います。

もし住み込みで働いていて、労務管理が十分でなければ、事実上24時間勤務のようなことに陥りがちな環境にあった可能性があります。

「ハイランドしらびそ」の現状は、この新聞記事から読み取ることはできませんが、このような閉鎖環境をやむなしとする職場は、ここ以外にも思いのほかたくさんあると思います。

ダム建設の現場や、ダム管理事務所もその部類に入ると思いますし、気象測候所、尾瀬の山小屋は訪れる人になくてはならないものですが、これも閉鎖環境になるはずです。

街の中にあっても、工場のほんの一部の独立したセクションであるとか、マンションの一室でソフトを組んでいる会社なども、たちまち閉鎖環境になる可能性があります。

新田次郎という昭和を代表する作家先生の小説に富士山の気象測候所に台風観測用の大型レーダーを建設するストーリー「富士山頂」や同じく富士測候所員が主人公の「蒼氷」や太平洋の孤島の測候所勤務の人たちを描いた「火の島」などがありましたが、いずれも職場は閉鎖環境です。

「このひとたち自由時間あるんか？」

それらの小説を読んだ関西出身の中学生はのんきにそんなことを思っていましたが、これらの小説に登場するのが公務員だとしても当事者にとっては深刻な問題です。

「従業員らを支援する宮下将吾弁護士は『タイムカードを書き換えられるケースもあった。いつ過労死が出てもおかしくない職場環境で、経営側に雇用管理する能力がなかった』と指摘。」同記事

さきほどの新田次郎先生の「火の鳥」では孤島の測候所の職員同士の人間関係とストレスについての心理描写が見事なのですが、閉鎖空間で同僚同士の人間関係の不調はたいへん重い話です。

閉鎖環境でブラック上司‼

これはもはや最悪の悪夢と言わざるを得ません。

シャイニング

スタンリー・キューブリック監督の80年代の映画にこのようなタイトルの映画があります。しらびそ高原のように冬の間閉鎖されるホテルの管理を依頼された家族のお話です。

ホテルが冬季閉鎖された後ジャック・ニコルソンが演じる小説家のお父さんが閉鎖環境の中で発狂して、斧を振り回して家族を襲い始めます‼

とてもこわい‼です。ジャック・ニコルソンの演技がまたこわい‼

しらびそ高原がシャイニング化していたと思いたくはありませんが、結果論とはいえ新聞記事になり白日のもとにさらされたことはある意味良かったのかもしれません。

シャイニングのエンディングで次の朝が訪れたようなものです。（ちなみにジャック・ニコルソンは庭で凍死して凍り付いていました…）

閉鎖環境での労務管理は難易度が高いと思います。そのような仕事があるときには事前に専門家に相談することをお勧めします。

もちろん‼経営者の方々に申し上げております‼