[173] 休職補償 パートにも ゼブラ 病欠など、月収の3割(日経新聞)

筆記具大手のゼブラ(東京・新宿)は3日、病気やケガなどで長期間働けなくなった社員に、一定の収入を保障する制度を始めると発表した。」H30.9.4火 日経13面 企業1

この記事のようにお勤め人をしていて「病気やけがなどで長期間働けなくなった」場合には、加入している健康保険からお金が支給される仕組みになっています。

健康保険というのは「協会けんぽ」や「健康保険組合」や「共済組合」のことです。

この傷病手当金の制度は、働けなくなったお勤め人にはとてもフレンドリーな制度だと思いますが、実務的には、すこしやっかい?な特徴があり注意が必要です。

すこしやっかいだなというのは、本人にとっても会社にとっても気を付ける性質があるということです。

それは…

社会保険料(健康保険の保険料や掛金など)が免除されない!ことです。

働けなくなってお給料がもらえないにかかわらずです!

「鬼! ヒトデナシ! なんて冷たいんだよぉ~」

そうなりますよね。

例えばパートで働いている場合、働いた時給でお給料がもらえているわけですから、会社に出勤できなくなれば、当然お給料はゼロ円になります。(正社員は月給制ですので少々?欠勤しても直ちにお給料はゼロにはなりませんが、パートの場合は切実ですよね。)

で…お給料がゼロ円にもかかわらず、

健康保険の保険料などは同じ額を引き続き払ってください!となるわけです。

むろん健康保険の保険料の額を計算しなおす仕組みはあるのですが、実際には数カ月のタイムラグができます。また病欠が長引いたので、この仕組みで計算しなおして最低ランクの額になったとしても、ゼロ円にはならない、つまりどこまでいっても免除にはならないルールになっています。

「会社で負担してあげる!」

そこで、見かねた社長の鶴の一声は、まるで神のようですが…

当局の見解は異なっていまして…

会社が負担した社保料は、

それはお給料とみなしますので!傷病手当金を減額します!

この応酬は錦織圭選手とジョコビッチ選手のラリーを見ているようです。

そもそも傷病手当金は、働けずに喪失したお給料の代わりに支給されるものですから、理屈と言えば筋の通った理屈ですが、すこし過酷な理屈のような気もします。

社員は自らの負担無しに、休業中も最長3年間は給与の3割分の収入が得られる。」同記事

このゼブラの「3割分」は健康保険の傷病手当金とは別の「団体長期障害所得補償保険」というものから支給される保険金です。

つまり、会社がお給料を支払ったことにはならず、傷病手当金は(無傷!)減額されません‼

技あり!

ですよね‼


これぞ「神」です!

保険料はゼブラが負担する。対象は約900人でパートを含む。」同記事

正社員は月給制であることが多く、すこし欠勤をしたぐらいで直ちにお給料が減額されることはあまりありませんが、パートの場合は一般的に保有している有休の日数もすくなく、減額の可能性は高いと言えます。

したがって、

この制度は正社員よりもパートにより恩恵がある仕組みになっていると思います。

損害保険から3割のお給料が支払われるわけですから、自ら自腹を切って社保料を支払わなくとも支給された保険金の中から社保料を支払うことができます。

パートや派遣社員など非正規社員は対象外である場合が多いのが実情。傷病時の支援制度の充実は非正規社員の待遇改善に取り組むメッセージとなる。」同記事

厳しい採用環境が続くなか、高い技能を持つ人材をつなぎ留める効果も狙う。」同記事

ところが会社側から見ると、いくら福利厚生になるといっても損害保険料を負担するのは会社ですから、自社の休職発生頻度や期間、採用コストなどを総合的に吟味する必要はあると思います。

しかし、求人票に上乗せ休業補償制度を書くことができるなどのメリットがありますので、採用募集力を向上しようと思っているのであれば、検討の価値はありそうに思います。

またこのような制度を導入するときには社内の評価も侮ることはできません。

「価値ある制度は社員が居酒屋で話題にする!」

先日受講した労務研修の講師がこのように言っていましたが、確かにその通りだと思います。この上乗せ休業補償制度が居酒屋で話題にされるかどうかは予断を許しませんが、ぜひ居酒屋で「オレの会社わあ~万が一休職しても給料ほとんど出るんだぜー」という話題で盛り上がってほしいものです。

このポイントを制度導入の判断材料にするというのは結構すぐれた指標ではないかと思います。

2018年09月25日