[168] 「正社員に時給」広がる(日経新聞)

正社員に時給で賃金を支払う企業が出てきた。」H30.8.23木 日経20面(マーケット商品)

かつてサラリーマンの成果を表すひとつの指標は「年収」でした。

わたしが社会人になった昭和62年(1987年)当時はこの指標が大変幅を利かせていましたので、わたしも「年収1,000万」を目標にサラリーマン街道をスタートすることにしました。

「その1,000万って税込みか?」

このように尋ねられてなんのことかわからずドギマギしていたわたしは本当にアホだったと思います。

いまの私があの若いころもしオレサマでもう少し賢ければ、収入と所得の関係の理屈を口汚く関西弁で言い返して相手を閉口させていたと思います。でも冷静に考えるとこんな態度をとっていると関西地方以外では仲間を失いそうなので、ドギマギもじもじしていたアホなわたしでちょうどよかったのかもしれません…

そんな未熟な私にも目標は3つありまして、①年収1,000万円!②部長になる!③出張の新幹線車内でコーヒーを飲む!でした。①②はなかなか難しい目標ですが、③は案外たやすく実現できまた。

それで調子にのった私は、コーヒーを進化させてビールや水割りやワインにまで発展させてしまいました… サラリーマンの欲望はあてどがありません…


正社員は月給制、時給制は非正規社員が対象なのが一般的なイメージだ。」同記事

さらりと書いてありますが、月給制と時給制ではたとえ時間に換算して同じ額だったとしても、月給制と時給制では処遇におおきな差があると言わざるを得ません。

時給制というのは文字通り働いた時間でお給料を支払う制度ですので、働かなければお給料は支払われません。つまり遅刻や早退をすれば直ちにお給料が減額されるのが時給制です。

なんだか当たり前のように思いますが、すこし注意が必要です。

ノーワーク・ノーペイというわかりやすい原則がありますが、この原則がストレートに表れるのが時給制だということです。ノーワーク・ノーペイというのは「働いた分だけお給料をお支払いします!」ということです。裏を返せば「働いていなければ、お給料はお支払いしません!」ということです。(「お給料をお支払いしないのであれば、働いていません!」これは対偶ですので、これまた真になりますね。)

対偶はともかくとしまして…

時給制に対して月給制というのは、月ごとにお給料を支払う制度ですので、たとえば無断欠勤をしたとしても直ちにお給料が減額されるというものではありません!

Oh! Really?

どのような場合にお給料が減額されるのか?とか、減額はいつ復活するのか?ということについては、会社ごとに就業規則で定めているはずです。

「うちの会社のパートさんは時給だけど、月ごとのお給料日に給料もらってるよ。」
「それ月給だよね。」

このような意見があると思いますが、確かにそれは月給ですが月給ではないことに留意が必要です。

このようなパートさんなどは、おおくの場合、時給で計算した一日一日分をひと月分まとめてお支払いします!という制度になっていると思います。

このような計算方法を日給月給制と言います。

これは月給ですが月給制ではなくて日給月給制であり、ノーワーク・ノーペイの原則が時給制と同じようにストレートに表れる制度です。


フルタイム社員に自分の時給を意識させ、生産性を上げる例も出始めた。飲食店チェーンのオカシオ(東京・渋谷)は昨年、ほぼ全社員を時給払いに変更した。」同記事


このような実例がありますが、不利益変更にならずに月給制から時給制にどのような労使の話し合いを経て変更を実現したのか、社労士という職業柄個人的にとても興味があります。

「時給」ではなく「時給払い」と書いてありますので、そのあたりにポイントがあるのかもしれません。


制度変更まで踏み込まないケースもある。人事ベンチャーあしたのチーム(東京・中央)は4月から、全社員の月給を労働時間で割った時間換算額を社員に公表している。」同記事


これは制度が月給制のまま時給換算額をお知らせするだけですから、不利益変更の心配はないと思います。記事はこの二社について、確かに書き分けてありますので、このあしたのチームと先ほどのオカシオの施策の違いに大変重要なポイントがあるということだと思います。


そのポイントとは「月給制とはなにか」ということであり「正社員とはそもそもなにか?」「なにをもって正社員というのか?」ということだと思います。


これからはこのようなことを顧問先の利益のために具体的に考える社労士が必要になるのだと思います。

まさに社労士法第2条の3号業務そのものです。

おおかみの仕事ですね…
※おおかみの意味は[167] ご参照ください。

2018年09月06日