[167] 税・社会保険 書類不要に 企業、クラウドにデータ(日経新聞)

政府は2021年度を目標に企業による税・社会保険料関連の書類の作成や提出を不要にする検討に入った。」H30.7.3火 日経1面

これは社労士にとって衝撃の記事です!

その理由について、すこし解説させてください。

社労士のお仕事というのは法律上3つのカテゴリーに分類されています。

順番に「1号業務」「2号業務」「3号業務」と呼んでいます。

「号」というのは法律の○○条○号の「号」のことで、具体的には社労士法第2条の1号2号3号に記されているお仕事という意味です。

まず「1号業務」というのは労基署や労働局や年金機構に企業が提出しなければならない書類が法律で決まっていますが、それらを会社のかわりに作成して提出するお仕事のことです。「申請代行」のことです。

これは法律上社労士の独占業務ということになっていて、例えば行政書士の先生が就業規則を労基署に届け出ることはできません。

次に「2号業務」というのは、法律上会社は①労働者名簿 ②賃金台帳 ③出勤簿を作成しなればならないのですが、これを会社にかわって社労士が作る(調製する)お仕事のことです。

これも法律上社労士の独占業務ということになっています。

そして「3号業務」ですが、社労士法には「事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること。」社労士法第2条第3号 となっており一読しただけではなんのことかよくわかりませんが、要するに会社をコンサルタントするお仕事ということです。

これは社労士でなくでもできるお仕事ですので、社労士だけができる独占業務ではありません。

このように3種類のお仕事が社労士のお仕事と思って、ほぼほぼ間違いはないのですが「社会保険料関連の書類の作成や提出を不要にする」同記事 となってしまうと…

すべてではないと思いますが、

「1号業務」と「2号業務」の必要がなくなってしまうことになります!


ビックリマーク(!)をつけて焦っているのは社労士だけで、会社にとっては面倒な書類を書かなくてもよくなりますし、いままで書類をつくってもらっていた社労士に報酬を支払わなくてもよくなりますので、むしろ歓迎されることだと言えます。



企業は給与情報などをクラウドにあげ、行政側がそのデータにアクセスし、手続きを進める形に変える。官民双方の事務負担を減らして生産性を高め、スタートアップ企業の創業も後押しする。」同記事

最後の「スタートアップ企業」というのが出てきてよくわかりませんが、ようするに起業したての創業ほやほやの会社ということです。

人事・総務部門に人手をさけないスタートアップにとって従業員の税・社会保険料の手続きは経営に重くのしかかる。政府は起業しやすいビジネス環境を目指しており今回の改革はその一環だ。」同記事


書類の作成・提出が無くなれば、企業の負担は大幅に削減できる。行政側も書類の保管などのコストが減る利点がある。」同記事

むむむむむ…

ますます社労士にはアゲンストで分の悪い流れになっています。

税金関係も同様なので税理士先生方々にも激震が走っているのではないでしょうか…

この記事に書かれているクラウド化の対象は「社会保険」とあります。
普通の人はあまり意識しないかもしれませんが「社会保険」というのは「健康保険」と「厚生年金」などのことを指します。労災保険や雇用保険は「労働保険」といいまして「社会保険」とは区別しています。

ということは…この度のクラウド化は「社会保険」が対象であって「労働保険」の申請業務はそのまま残るのではないか?

厚生労働省を以前の労働省と厚生省に分割してはどうかという議論も始まっていますので「社会保険」がクラウド化されたからと言って、ただちに「労働保険」が追従すると言い切ることはできないのではないか…

そのような考えに筋がないわけではありませんが80年代にCD(デジタル)が出現したころにLP(アナログ)はLPの良さがある!と主張しているようなものかもしれません。

確かに一理はあるのですが、現実はご存知の通りです。

「これからの社労士は3号業務だ!」

このように30年ぐらい前から提唱されていたと先輩社労士から聞かされたことがあります。

いよいよ本物の3号業務オオカミが本当に姿を現す時がやってきたのかもしれません。


2018年09月04日