[164] 50代社員向け研修多彩 役職定年後のキャリア支援(日経新聞)

人材サービスのパソナマスターズは、… 一定の年齢がくると管理職から外す「役職定年」前の社員を集め、3カ月間研修する。」H30.8.8火 日経11面(企業2)


「一定の年齢」とはどうやら「50代」のことみたいです。

50代というとこのイラストのように調子にのっているお年頃でしょうね。

個人的なことですが、わたしがサラリーマンを辞めるのを決意した時が51歳で、実際に退職をしたのが52歳でしたので、あのまま退職せずに在籍していたならば「役職定年」となり「3か月間研修」に召集されていたかもしれません。

多くのサラリーマンは役職を目印に上を目指していくという仕組みの中で生きています。

私が社会人になったころはまだ昭和の時代でしたので「出世」なんていう言い方をしていたように思います。とにかく偉くなってみたい!お給料がたくさんほしい!家庭を持って家を買ってみたい!クラウンに乗ってみたい!もちろん運転手つきで!このような欲望の目印が役職だったのです。すくなくとも勤め人時代の私のモチベーションはそこにありました。

50代というと全員ではありませんがその目標を首尾よく達成した人がいる年齢層です。わたしもなんとなくその中のひとりでした。

そのような価値観を会社が認めてくれた!とわたしは思っていたのですが、本当は「そのような価値観を会社が認める仕組み」になっていたのだと思います。

わたしは上を一途に目指すサラリーマンの仕組みの虜(とりこ)にすっかりなってしまっていたということです。

それがわるいわけではないと思うのです


サラリーマンを長きにわたってやってくると、自分の力を試すチャンスが何度か巡ってきましたし、それなりの数の部下を率いる経験もできました。それに働きに見合うと思える報酬を得ることまでできました。

しかし…

そこに到達するまでに25年以上の年月がかかるのがこの「仕組み」の特徴です。

25年経過するとほぼ50歳ですね。

四半世紀にわたり、ひとつの価値観の中でやってきたひとの意識を改革するのはとても難しいことだとわたしは思います。もう染みついているのです。

自身の強みを再確認し、肩書や立場が変わっても価値を提供するための心構えや行動目標をたててもらう。」同記事

このように記事にはありますが、もしわたしがあのまま会社にいて研修に召集されたとして、開口一番このようなことを言われたとしたら… わが身に置き換えて想像するだけで心がざわつきます。

明治安田生活福祉研究所(東京・千代田)の調査によると役職定年後は4割の人が年収がそれまでの半分未満に減り、役割の変化などもあって働くモチベーションが低下する場合が多い。」同記事

これを3カ月程度の研修でどのように手当ができるのか個人的には大変興味のあるところです。

大学のように、教養課程とゼミ形式の専門課程で構成する。教養課程で働き方や生活設計などを学んだうえで、5~10人のゼミを選び所属する。」同記事

わたしも人事部で研修実施計画の差配をしていましたのでよくわかりますが、ここに書いてある内容は、かなり手厚い研修形態だと思います。

さらに読み進めますと…

起業などのノウハウを習得することもできる。」同記事

えええええええ!そんなあ…

25年以上も仲間だと思っていたのに、あとは「起業」でもして自分一人で歩いていけ…という意味ならばあまりに過酷で無慈悲で身勝手な言葉だと思います。

たとえの話だとしても、これは聞きたくない言葉ですし、言ってはいけない言葉だと思います。「シャレにならない」というのはこのことを言うのです!


長年飼っていた愛犬ぽちの首輪に千円札を括りつけて「さあ、おゆき!おまえならできるはず!3カ月の訓練の成果を見せるときよ!」と野山に放たれてしまうようなものです。こころのさざめきが止まりません… イラストの犬のようにブルブルブル震えてしまいます。

たとえ会社の犬…だったとしても、ずっと仲間といっしょにやってきたのですから… 負け犬ではないはずです。自分が負け犬ならば、みんな負け犬ということになってしまいます。仲間なんですから…

なのに…仲間をはず(さ)れて、ひとりで成果を試せなんて…

これから将来に向かって「働く」ことの意味を、個人も会社もよくよく噛みしめることが大切になってくるのだと思います。研修だけを実施して「働く」ことに関する課題のすべてが解決すると思っている会社はまずないと思います。研修はもとより会社の制度や経営方針まで及ぶような深い課題だと気づき始めているのだと思います。

だれでも年はとるのですから… なんとか最期まで(あえて最後ではなく最期)誇りをもって生きていきたいと思いますし、それを会社が手助けをしてもいいはずです。

そのこたえやヒントは、定年のある大企業よりも定年の定めを早々に廃止している中小企業にあるのかもしれません。

2018年08月23日