[163] 「自由だから非正規」4割増(日経新聞)

働く時間の自由度を求めて非正規雇用を選ぶ人が増えている。」H30.8.8水 日経1面

日経新聞の8/8の1面にこのような記事が掲載されていました。わたしは3日か4日ごとにまとめて新聞をチェックするので、この記事は自宅に届く新聞を見ることよりも、事務所に向かうJRの中で人の読んでいる日経新聞をチラ見したのが初見でした。

たとえばわたしがJRのロングシートに腰かけいるとして、て正面に新聞を読んでいる人が立っていると、1面はどうぞ見てください!の距離と場所に来ることが多いのです。

その日わたしに日経新聞1面を見せてくれたのは、たぶん20代と思しき勤め人と思われる男性でした。

「この人は正社員かな?非正規かな?」
「非正規だとなにしているひとだろう?」
「非正規だと年収は必要な額あるのだろうか?」
「非正規だけど、おじいちゃんのマンションを相続して不動産収入が上司より多かったりして!」
「非正規だけど、嫁が派遣会社の社長だったりして…」


70年代のドラマ 「俺たちの旅」のグズ六(秋野太作)みたいです。グズ六は大学卒業後、人材派遣会社を経営していることになっているのですが「俺たちの旅 30年SP 三十年目の運命」では、嫁(上村香子)が派遣会社の経営を切り盛りして、グズ六はふらりふらりとしているという設定になっていました。

ひとは見かけによりません。わたしも勤め人から自由業に転じて、そのことをつくづく感じます。

つまりこの「自由だから非正規」の日経1面の記事は、いろんな人がいろんな理由で非正規を選択しているのだという前提で読む必要があるということです。


すべての人が自分と同じ価値観や環境であるはずがありません。


総務省によると、4~6月時点で「都合のよい時間に働きたいから」非正規で働く人は592万人で、5年前から44%増えた。」同記事

44%増えたというのはずいぶん増えているように思えますが「5年前は411万人だった」ということです。(592万人 ÷ 1.44 =411万人)わたしは統計の記事を読むときには、このような計算を電卓でやりつつ読んでいます。たいてい愛用のiPhoneの電卓を使います。

総務省が7日発表した4~6月の労働力調査によると、パートや派遣社員といった非正規雇用は前年同期より4%多い2095万人だった。」同記事

非正規雇用者が2095万人いまして、そのなかの592万人が「都合のよい時間に働きたいから」といっているということですから、非正規雇用の4人に1人は「都合のよい時間に働きたい」と言っているということです。(2095万人 ÷ 592万人=3.53人≒4人)

「おおっ これからは非正規に対する見方をかえなあかんな!」


そのように断じるのはまだ早いかもしれません…

この8/8の記事の1か月ほど前の記事と合わせて読んでみるとその理由がわかります。

総務省が13日発表した2017年の就業構造基本調査によると、働く人全体の数は6621万人で、12年の前回調査から179万人増加した。」H30.7.14土 中日28面(社会)

非正規労働者自体の全体数が増えているということです。

このうちパートや有期契約、派遣などの非正規労働者は90万人増の2133万人となり過去最多を更新した。」同記事

非正規の数は「労働力人口」の2095万人と「就業構造基本調査」の2133万人で若干違いはありますが、集計方法の違いの誤差と言ってもよい範囲だと思います。

人口の多い団塊の世代が定年退職し、有期契約や派遣で再就職する事例が増えたためとみられる。」同記事

つまり団塊の世代のおじさんたちが非正規デビューしたので、非正規全体の数が増えた。その結果4人に1人が「都合のよい時間に働きたい」と言っている…


そりゃそうですよね…

後ろ盾に「年金」をもらっている、もうすぐもらえる人たちの声がマジョリティになっているのですから「都合のよい時間に働きたい」ですよね…

この5年で24%減ったとはいえ「正規の職員・従業員の仕事がないから」非正規で働く人も259万人いた。」H30.8.8水 日経1面

このような声が非正規デビュー組(多くは団塊の世代)によって薄くなってしまったという見方もできます。非正規は働き方改革の九つの柱の一つですが、非正規課題の解決はまだまだ先がありそうです。


2018年08月21日