[157] 医師の命 板挟み 拒めぬ診療 働き方改革論点(中日新聞)

医師の応召義務とは医師法19条は、医師は正当な事由がなければ、診療の求めを拒んではならないと規定。医師が不在だったり、病気だったりした場合を除き、診療時間外などの理由では診療の求めを拒否できないとされている。」H30.1.16火 中日新聞1面


“お客様のなかにお医者様はいらっしゃいませんか‼”


この有名なフレーズの根拠となっているのが「医師の応召義務」(医師法19条)だということです。救命救急のドラマのみならず、病院24時などのドキュメンタリーで食べかけのカップヌードルと箸を置き去りにして処置にあたるドクターを見かけますが、まさに彼ら彼女らを支えているのもこの「医師の応召義務」(医師法19条)だと思います。

医師としての矜持そのものなのかもしれません。

「先生‼この子を助けてください‼」

「σ(゚∀゚ ) オレ 今日は早番だから…」
「σ(゚∀゚ ) オレ 残業できないんだよねぇ…」
「σ(゚∀゚ ) オレ タイムカード押しちゃったから…
「σ(゚∀゚ ) オレ 明日定時に来るのでまた来てください…」

というわけにはいきません!
(ドラマにもなりません!)

医師の応召義務は明治時代に制定され、いつでも診療を受けられることの根拠とされているが、過労死遺族から「長時間労働の一因」との指摘もある。」H30.1.16火 中日新聞1面

「医師」の応召義務ですから、法律的にはドクターに限った話ではあるのですが、現実の医療はドクターだけで成立しているのはありません。看護師をはじめ様々な医療関係者の働き方が「医師の応召義務」をめぐって働く時間はもちろんのこと責任分担や人事評価までもが規定されているのだと思います。医療関係職種全体がそもそも長時間労働の傾向にあるということです。


・大学病院医師は5% 労働のタイムカード管理 民間下回る H30.2.19月 日経夕刊12面

・救急科の勤務医 過労死ライン超 労組アンケート、産科も H30.2.26月 日経夕刊10面


労組はこのようなアンケートの結果を示して医師の労働条件が過酷であることを示していますが、病院としての「サービス低下」を懸念する意見もあります。


働き方改革 病院半数懸念「診療時間短縮、サービス低下」H30.5.6日 中日新聞1面
「働き方改革関連法案で医師の時間外勤務が規制されることを巡り、中部六県(愛知、岐阜、三重、長野、福井、滋賀)の主要病院の半数以上が、診療、救急患者の受け入れ抑制などの影響を懸念していることが、本紙のアンケートで分かった。」


これは医師や看護師などの個人に対するアンケートではなく、病院という組織に対してのアンケートであるので経営的な視点が織り込まれていると思いますが、働き方を変えたら会社の経営が不安定になり、やがて倒産して働く場所が失われる…ならば残業をしている今の方がよいのではないか?という一般企業のジレンマと同じ問題が起きているということです。

「規制に賛成する病院はなかった。」

このアンケート結果は、すこしインパクトがあります。

各県から「救命救急センター」に指定され、重傷患者を二十四時間体制で受け入れている大学付属、効率、民間などの四十六病院を対象に実施。三十九病院から回答が寄せられた。

つまりある程度重要病院とされている39病院の回答の中に「規制に賛成する病院はなかった」ということです。病院の経営サイドの意見としてアンケート結果が紹介されていますが、医療サービスを受ける側の個人としてのわたしたちの視点でもあるのかもしれません。お医者さんが忙しいのはわかるけど、自分だけは診てほしい!救急で運ばれたときにお医者さんがいないとか、病院そのものが廃業してなくなっていた…とかは困る‼というご都合主義的な考えにとらわれてなんだかモヤモヤします…

働き方改革法案の施行は、医師の場合5年の猶予が設けられており具体的に上限規制などが施行されるのは具体的には2024年になる予定です。それまでにこの問題の出口が首尾よく見つかればよいと祈るばかりです…

医師の応召義務(医師法19条)と労働基準法のセーフティなランディングポイントはなかなか一筋縄ではいかない難しい課題だと思います。

2018年08月02日