[154] 労基署 窓口相談を増強 (日経新聞)

厚生労働省は主に中小企業を対象に、違法な長時間労働の是正に向けた指導を強める。… 労働基準監督署の窓口でルールを説明する指導員を2018年に約5割増やす。」H30.2.27火 日経新聞44面

厚労省は… この指導員は非常勤で雇用した社会保険労務士などが担う。」同記事

このような「増強」を予定しているという記事でした。

多くの人が「ふ~ん」で通り過ぎる記事だと思いますが、わたしは社労士として「おぉ!ほんまか?」とこの記事に目をとめてしまいました。

社労士が行政からの「委託」業務として労基署や年金事務所への協力をするケースを日頃耳にしていましたが、この記事では「雇用」となっているからです。

「委託」と「雇用」は大いに違います。

「委託」はあくまでもお預かりしたお仕事の結果に対して「報酬」を頂戴するタイプです。それに対して「雇用」は指示されたお仕事をする行為に対して「賃金」の支給を受けるタイプということになります。お互いの関係では「委託」の場合のボスはあくまで社労士である自分自身であり労基署は単なる発注者であるのに対して、「雇用」の場合のボスは労基署の職員であり自分自身はあくまでも部下という立場だということです。税制の面では「委託」は事業所得であるのに対して、「雇用」は給与所得です。

このように「委託」と「雇用」では世界がまったく異なります。

実はこの記事の約1か月前にも似たような記事が掲載されていました。

労基監督官 OBを雇用 H30.1.10水 日経新聞
「厚生労働省は違法残業の監督指導を強化するため、2018年度から労働基準監督官OBを非常勤職員として活用する。」

こちらは記事には「活用」となっていますが、見出しに「雇用」とはっきり書かれていますので「委託」ではなくお給料の支給を受ける「雇用」だということです。

検査経験豊富なOBを最大50人雇用し、立ち入り権限を持つ監督官として働いてもらう。これまでも60歳で定年退職した国家公務員を65歳まで再任用する制度はあったが、再任用期間を終えたり、いったん退職したりした監督官OBを雇用する。」同記事

ここで注意が必要なのが業務内容の違いです。

監督官OB」の業務内容は「違法残業の監督」であるのに対して、「社労士など」の業務内容は「窓口相談を増強」なのです。

つまり法律に明らかに抵触している「違法」状態の会社に対しては、あくまでも「監督官」が対応するが、「社労士」には「36協定の提出時などに労基署の窓口で企業の担当者に対し…ルールを守るように説明・指導」するお仕事が求められているということです。

違法をただす「監督官」に対して、ルール説明の担当者は「指導員」です。

労基署の窓口で「指導」するのみならず「企業を直接訪れて自主点検を促す指導員も1割近く増員」としており、企業を訪問することもありますが、あくまでも違法が起きないように未然防止を図る役目が求められているということです。

そして…指導員は雇用されるということみたいです。

2018年07月24日