[149] 吉野家HD、営業益2.3倍 脱「牛丼一本」にモ~進

吉野家ホールディングスが6日発表した2017年3~8月期決算は、営業利益が前年同期比2.3倍の21憶円だった。うどん店「はなまるうどん」の積極出店がけん引役で、ステーキ店などの子会社アークミルの収益も改善。牛丼店「吉野家」では米国産牛肉の輸入価格下落などが利益を押し上げた。」H29.10.7土 日経

もはやすこし古くなってしまった記事ですが、牛丼3社の動向は日経新聞には都度都度掲載されていまして、それらを注意深く読んでいると、それぞれの経営方針や戦略の違いがわかってきて、個人的には大変興味深いと思っています。

PDCAという言葉がありますが、計画して(Plan)やってみて(Do)結果を見て(Check)改善する(Action)だいたいこんな意味だと思いますが、牛丼3社が例えば値下げ作戦をするとか新商品投入作戦をするとかいうことが記事になり、その結果は決算になって現れる。そしてまたたてた作戦が新聞に載る…このような流れが紙芝居みたくPDCAが展開されている様子を新聞紙上で楽しむ?ことができます。

特に牛丼店は、働いているのは日本人か外国人かとか、時給がいくらかとか、一店舗当たり何人が働いているかなどが、お店をちょっと外から見るだけですぐにわかるので、牛丼3社は観察にとても都合のよい業態で、新聞記事と合わせて読むとたいへん面白く?感じます。

もちろん店内で食事をすることもあります。

わたしは「牛丼たまご味噌汁」(「と」を入れずに、このように続けて注文するのが往年の通です!)いわゆる自称「黄金のセット」をかれこれ40年ぐらい頼み続けています。カウンターにセットされている甘酸っぱいショウガも昭和の時代から大好きです。牛丼の上にモリモリ盛り付けていただきますが、先日そのショウガの上にフレンチドレッシングをかけて食しているお兄さんを見かけました! 視線がくぎ付けになってしまいましたが、まねしてやってみるとこれがなかなかのさわやかさで、もはや40年のキャリアであるわたしにとっても新しい定番になったりする…そんな新情報にありつけることもあります。実地踏査には他では得難い価値があると思います!

そのような食の情報をゲットしながらも、店内の人数や担当割や時給などをチェックするのは、わたしの習慣になっています。

それはともかく、このような牛丼3社の動向はおもいのほか新聞に取り上げられておりまして、今日はその一部をご紹介したいと思います。昨年の春から夏にかけての記事です。


・値下げの吉野家 苦戦 既存店売上高、伸び鈍く 競合他社はメニュー改善 H29.4.6木 日経

・吉野家HD、9年ぶり高値 商品戦略見直しを好感 H29.4.21金 日経
※「高値」とは株式の値段のことです。4/6の記事はネガティブな内容でしたが「前期に客単価の減少で落ち込んだ牛丼店「吉野家」も収益回復を見込む。」としていますので、吉野家HDが説明した回復戦略が市場に認められてたのだと読むことができます。

・「吉野家」売上高2か月ぶり減少 4月既存店、8.4% H29.5.9火 日経
※「吉野家」とカギ括弧がついているのは「はなまる」や「京樽」などを含めた(株)吉野家ホールディングスではなくて、その中の牛丼の「吉野家」だけを指しているという意味です。

ここまでは「吉野家」さんのお話ですね。春に吉野家は値下げをした。その結果は4月にはまだわからなかったが、値下げ以外の商品戦略の見直しは「株式」市場関係者からは評価された。しかし!値下げの影響があったのでしょうか。売上が減少してしまいました!という流れがわかります。

・松屋フーズが最高益 前期最終75%増、14期ぶり H29.5.10水 日経

・牛丼、材料値上がり懸念 松屋フーズ 今期原価率1ポイント悪化 H29.5.23火 日経
※松屋さんの「原価率」が悪化したということはすなわち「生産性」が低下するということを意味します。(詳しくは前回の解説を参照ください。)

・牛丼大手3社そろって増収 5月、0.6%増 H29.6.6火 日経

・松屋フーズ9%増益 4~6月最終 H29.8.1火 日経
※5月末には原価率が悪化して生産性が低下するかと思っていたら、どうやら売り上げを伸ばして利益を伸ばした!という記事です。生産性は向上していますね。すばらしい!

・牛丼ホットLINE 出前サービス始まる H29.7.27木 中日新聞
※たまには中日新聞にも消費者に身近な「牛丼」関連の記事が掲載されます。


このように牛丼3社は身近な企業ということもあり、個人的な関心が高く思いのほかたくさんの記事が掲載されるのだと思います。会社別や業界動向などに注目して記事を整理すると、マーケティング戦略の実験室のような紙芝居をみることができます。それに加え売上高が3社を合計すると8,200憶円ですから、社会的な関心も高いといえる業態なのです。しかも日本発ですから、ハンバーガーやアイスクリームとは違った特別な関心事だということでしょうね。

専門家としても個人的にも身近な会社を財務や労務の視点で観察することは、わたしの楽しみのひとつになっています。


2018年07月05日