[110] 裁量労働制でNHKに指導(中日新聞)… ②

専門業務型や企画業務型は、働いた時間を把握することが前提となっている!

これが先回申し上げた「みなし労働」を理解する大切なポイントでした。

ではもう一度、三つの例外的法律が適用される「みなし労働時間制」の必要条件についておさらいをしてみたいと思います!

① 働いた時間を把握することが困難なとき(事業場外)

② 働く時間を指示できないとき(専門)

③ 働く時間を指示しないとき(企画)

専門や企画の場合、上司が働く時間をとやかく言わないだけで、働いた時間についてはもともとの法律通り把握しておかなければなりません!

働いた時間を把握しないでいいとは②③にはどこにも書かれていません。

たんなる「指示できない」「指示しない」ですからねぇ…

書いていないときには、もともとの労働基準法の原則が適用されるのです。

「みなし」だからと言って、放置されているわけではないことがわかると思います。

働いた時間や時刻に従って、もし午後10時から午前5時までの深夜勤務があったり、法定休日に勤務があったりすれば、割増分のお給料を払うことになります。

上司は専門業務型の場合には「指示できない」、企画業務型の場合には「指示しない」ではありますが、時間管理はきちんとやる必要があるのです。

それに対して「事業場外みなし」の場合には、もともと「働いた時間を把握することが困難なとき」に適用される制度なので、上司は時間管理がそもそも不可能!という絵になっているということに注意が必要です。

乱暴に扱うと「事業場外みなし」は労務管理上のリスクがあるのがわかると思います。

NHKは佐戸さんの労働時間をタイムカードや自己申告により把握していたが、「勤務管理がきちんとできていたか、反省すべき点はある」としている。」H29.10.5木 日経

あ?」(怒)

おかしなことを言っているのが、おわかりになりますか?

労働時間が把握できる場合は「事業場外みなし」とはなりません!

ですよね!

反省するのは結構ですが、このコメントには「事業場外みなし」を前提にするには、すこしトンチンカンなところがあるように感じます。

NHKは二十六日、記者佐戸未和さん=当時(31)=が2013年に過労死したことを受けて今年四月から記者職に導入した裁量労働制について、渋谷労働基準監督署から「記者の業務実態を踏まえ、労使間で検証し、適切な水準に定めること」とする指導票を受けていたことを明らかにした。」H29.12.27水 中日

この四月から導入した「裁量労働制」は「裁量」となっていますので「みなし」三姉妹の中の「事業場外」ではないということになります。では…「専門業務型裁量労働制」なのでしょうか? 「企画業務型裁量労働制」なのでしょうか?

「記者職」となっていますので「企画」ではないと思いますので、とすると…「事業場外」から「専門業務型」に切り替えたということになりますね。

「事業場外」の労務リスクを反省して「専門業務型」に切り替えたのかどうかは、この記事の範囲ではよくわかりませんが、「裁量」労働制の運用原則にしたがって、労働時間を今後は把握して運用することを祈るばかりです。

いっそのこと!

トヨタみたく… 法律で定められた裁量労働「制」ではなく、原則的な法律の枠組みで柔軟運用する「裁量労働」にしたら?と思いますが、なにかNHKには事情があるのかもしれません。残念ながらそこまで記事から読み取ることはできませんでした…

このように新聞を読むと、新聞にはいろいろな情報が盛られていることがよくわかります。

理解が深まっていきます…

今日の記事ネタまとめ

①裁量労働制でNHKに指導 労基署、記者過労死で H29.12.27水(中日新聞)
②NHK女性記者 過労死 残業159時間、労災認定 H29.10.5木(日経新聞)
③NHK女性記者 過労死 14年に認定 選挙取材、残業159時間 H29.10.5木(中日新聞)
④両親「異常勤務 なぜ放置」NHK過労死 局内共有に遅れ H29.10.14土(中日新聞)

2018年02月15日